5回に5安打を集めて逆転…達孝太を攻略した舞台裏
現役時代に培った勝負師の“勘”が、最高の形で的中した。鮮やかな逆転劇を「演出」したのは、長谷川勇也打撃コーチ兼スキルコーチだ。2点ビハインドの5回に奪った一挙5得点。その直前に組んだ円陣で、ナインに伝えた言葉とは――。近藤健介外野手と柳町達外野手の証言から集中打の舞台裏を紐解くと、攻略のヒントは、1人の走者すら出せなかった「1巡目」に隠されていた。
28日の日本ハム戦(みずほPayPayドーム)、相手先発は22歳の達孝太投手だった。昨シーズンは8勝をマーク。今春のオープン戦でも13イニングを投げて無失点と、今後が楽しみな若きホープだ。この日も4回を終えてホークス打線はわずか1安打。5回2死満塁から近藤が逆転の3点二塁打を放ったが、小久保裕紀監督は「正直、あの回しかチャンスがなかった。達は去年よりも1つステージが上がったという印象」。白星を手にしながらも、22歳右腕が持つポテンシャルには唸るしかなかった。
5回に5得点を奪って逆転したホークス【動画:パーソル パ・リーグTV】
ホークスナインが円陣を組んだのは、5回の攻撃前。輪の中心にいたのが、長谷川コーチだ。いったいどんな“魔法”をかけ、逆転に導いたのか。イニングの先頭打者から、近藤が放った決勝打に至るまで。「ポイントになったのは、どこか」。そんな問いかけに対し、口にしたのは意外な答えだった。
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続きの内容は
5回一挙5得点の起爆剤。長谷川コーチが円陣で授けた“魔法”の一言
「1巡目」に隠されていたヒント…無安打の裏で職人が確信した攻略の予兆
柳町達が明かす集中力の正体。14球の粘りが呼び込んだ適時打の真相
近藤健介「相手にもどんどんプレッシャーがかかる」
「1巡目じゃないですかね。みんな、結構いい対応ができていたので。相手バッテリーも2巡目から探り探りになっていたのかなと。それも1巡目にある程度、いい対応ができたからだと思います」
結果だけを見れば、ホークス打線は達に3回まで完全投球を許していた。そんな中で4回には2人の走者を出し、24球を投げさせた。長谷川コーチは「達投手も2巡目から(ホークスが)違うことをしてきたので。“考える”ような作業が入ってきていたように思いますけど」と繰り返す。「相手にもどんどんプレッシャーがかかってくる。試合の流れの中で、いいアプローチができた」。試合を決めた近藤もそう語るように、アウトを積み重ねながらも日本ハムバッテリーに“考えさせる攻撃”ができていたのは確かだ。
円陣を組んだタイミングについて、長谷川コーチは飄々とした口調で振り返る。「たまたま要素が重なっただけで、なんとも言えないですけど。こればっかりは“勘”ですね」。現役時代は代打稼業もこなしながら通算1108安打を記録。傑出した集中力でさまざまな投手を仕留めてきたが、長年積み上げてきた直感が、この日も最高の形で的中した。
5回の攻撃で見せた集中力…柳町達も驚愕する“ゾーン”
3点二塁打の近藤に続いて、タイムリーを放った柳町。円陣の内容について「『センターに打ち返していこう』ということだったと思います。ミーティング通りのいいヒットが出たかなと」と振り返った。指示を忠実に守ったような打球が、二遊間を抜け貴重な追加点につながった。自身の一打を含め、一気に試合をひっくり返したホークスの集中力。5回の攻撃に詰まっていた“凄み”を、28歳のヒットマンが代弁する。
「すごかったと思いますね。結果を出している人は“ゾーン”に近いというか、そういう集中力をみんなが持っているのかなと。そんな集中力の持ち主に僕もなりたいなと思いますし、どんな状況でも入っていけるような“発揮の方法”を学んでいきたいです」
柳町は1、2打席目ともに7球を投げさせた。球筋を脳裏に焼き付けた計14球が5回の一打につながったという。「ある程度、打席には流れがあるので。その前もチャンスで回ってきましたけど、しっかり(四球を)選べましたし、見極めができたので。あの打席にもすごく生きたかなと思います」。昨年、最高出塁率に輝きタイトルホルダーになった背番号32。開幕2試合は3番に入っているが、チームに欠かせない存在として連勝スタートに貢献している。
「一番大事なのは、低めの変化球の見極めですね。そこを振らないことでカウントも進みますし、ある程度球数も増えるのかなと思います」。自らの足元を見つめて、柳町はそう締めくくった。ホークスが誇る屈強なバッター陣が“線”となって奪った5点。プロの技術、そして“勘”がたっぷりと詰まった攻撃だった。
(竹村岳 / Gaku Takemura)