“ストレス”で体重5キロ減…石塚綜一郎の悲壮な決意 簡単に受け取れない斉藤和巳監督の「愛情」

斉藤和巳2軍監督と言葉を交わす石塚綜一郎【写真:竹村岳】
斉藤和巳2軍監督と言葉を交わす石塚綜一郎【写真:竹村岳】

20日の阪神2軍戦で描いた今春初アーチ

「石ちゃん、たまには休みや」。タマスタ筑後の室内練習場。打ち終わった球を拾っていると、斉藤和巳2軍監督から声をかけられた。無情で厳しいはずのプロの世界。指揮官の“優しさ”がまた、胸に沁みた。「正直、怖さもありますからね」。少しやつれた表情の石塚綜一郎捕手は、淡々とした口調でそう語る。

 待望の一発が飛び出したのは今月20日、ファーム・リーグの阪神戦(タマスタ筑後)だった。3回1死二、三塁で左腕・富田の直球を完璧に捉え、左中間ネットを揺らした。2月の春季キャンプはB組で過ごし、結果を求めた1か月間。「この1本だけじゃ、何もわからないですけどね」と冷静に語ったものの、探し続けていた久々の感触だったことは間違いない。

「打った瞬間も上手く捉えたなって感じだったんですけど、入ったとまでは思いませんでした。セカンドまで全力疾走していました」。芯で捉えた白球はみるみると小さくなっていったが、足を緩めたのは二塁を回ってからだった。斉藤監督が「休め」というのも、石塚が“頑張り屋”であることを知っているから。胸に刻んでいる泥臭い“魂”の記憶。5キロも痩せた身体が、24歳の心境を如実に表していた。

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続きの内容は

1号3ランも「納得いかない」石塚の現在地
斉藤和巳監督が命じた「休め」の愛ある真意
ストレスで5キロ減…家でもバットを握る執念

バスはいつも“最終便”…打ち消し続けた不安

「『休むことも大切やぞ』って言われましたね。確かにとは思うんですけど、本当に休んでいいのか……。僕は、めちゃくちゃ練習することで成功体験を積んできたので。正直、怖さもあります。休むことは簡単ですけど、僕はその日に納得して帰りたいんです」

 休息の重要性を理解し、指揮官の言葉にも感謝しつつ、本音を打ち明けた。2024、2025年と春季キャンプではアーリーワークに“皆勤”で参加。今年も「アーリーがない日もありましたけど、ある日はちゃんとやり切りました」と、徹底的に技術練習を重ねてきた。早朝から野球と向き合うのは、石塚が長年築いてきた自分だけのルーティンでもある。

 宮崎での春季キャンプ中、アイビースタジアムからチーム宿舎に向かうバスの“最終便”は午後6時。室内練習場で、太陽が沈むまでひたすらバットを振り続けた。「2月はどちらかといえば時間が足りないくらいでした。本当はもっとやりたかったんですけどね」。1人、また1人と若鷹がバスに乗っていく。最後の最後まで練習していると、隣で見守る斉藤監督とも自然と2人きりになった。「やらないと不安になるじゃないですか。休んでいられないですよ」。休め、という指揮官の気遣いには深々と頭を下げる。だが現状に満足していられないのが、石塚の本音だった。

阪神戦で3ランを放った石塚綜一郎【写真:竹村岳】
阪神戦で3ランを放った石塚綜一郎【写真:竹村岳】

拭うことができなかったズレ…“ストレス”の影響で体重減

 春季キャンプから抱いていたのは、感覚のズレ。捉えたと思った間合いでも、得意としていたはずの直球に差し込まれた。思い描く理想の打撃は、まだ遠い。「“ストレス”で5キロ痩せました。ご飯の量を減らしているわけではないんですけどね」。苦笑いで口にした言葉に、苦悩が表れていた。とどまるところを知らない24歳の向上心。原動力は3桁時代に味わった貪欲な気持ちだ。

「『きょうはこうしたから良くなった、だから明日はこうしてみよう』っていうのを明確にしてから帰りたい。僕はキャンプに入ったら『絶対最後までやる』ってスイッチが入るので。僕の中では、これが必死だとも思っていないです。それは育成を経験しているからこそですし、僕の強みかなと。(2024年7月に)支配下になりましたけど、その気持ちは絶対になくしちゃいけないので」

 追い求める“形”を手にするまでは、家にいてもなかなか落ち着かない。ソファに座っていても「気になるので、不意に立ち上がって構えちゃいますよね」。足の裏の感覚や、腕の位置……。鏡と向き合うわけではないが、より良いフォームを探して生活を野球に費やしてきた。「気を遣っていただけるのは本当にありがたいです。もし休んでいたらもっと早くホームランが出たかもしれないですけど、やっぱり休む選択肢はないです」。そう言い切る表情に、一切の迷いはなかった。

「育成の時(の気持ち)はやっぱり大切にしたいです。ホームラン1本ではまだわからないですけど、自分のスイングを続けていくだけです」。誰よりも泥臭く白球を追い続ける。それが自分のスタイルだと、石塚は覚悟を決めていた。

(竹村岳 / Gaku Takemura)