途中出場で見事なアピール
愛弟子の成長を、目を細めてよろこんだ。17日に行われた中日とのオープン戦(みずほPayPayドーム)。途中出場のイヒネ・イツア内野手が8回に2ランを放ち、ファンの視線を釘付けにした。ポテンシャルの高さを見せつけた一振り――。それでも首脳陣が高い評価を与えたのは、見落とされがちな“一瞬のプレー”だった。
「芯で捉えていたので『いってくれるかな』と思いながら走っていました。打席に立ちたかったし、庄子さんが回してくれたので。本当にラッキーというか、回ってきてよかったなと思いながら打席に入りました」。
会心のアーチに笑みを見せた背番号36だが、評価されたのはその一打だけではない。その前のイニングに見せた、迷いのない“一歩”だ。7回無死一、二塁。センターのほぼ定位置に上がったフライで、二塁走者のイヒネは迷わずタッチアップを敢行。頭から滑り込む気迫で三塁を陥れてみせた。
この走塁を絶賛したのが、春季キャンプからイヒネを見守り続けてきた大西崇之外野守備走塁コーチだ。
チャレンジした走塁…褒められる理由とは
「ナイス走塁やった。書いてやってくれ」
試合後、大西コーチの表情はこれ以上ないほどに綻んだ。「俺もどうかなと思ったけどね。あれは一番迷うところ。センターが岡林だったし、後ろから捕球体勢に入っていたからね。よく思い切って来てくれた」。イヒネの成長を誰よりも近くで見守ってきたからこそ、喜びは隠しきれなかった。
大西コーチがこの走塁を称えることには大きな意味がある。その後に続く正木智也外野手の3ランを“呼び込んだ”と確信しているからだ。
「バッターの気持ちも全然違うから。三塁に行ってくれたことで『最低限の犠牲フライでもいい』とバッターは考えられるし、狙い球も絞りやすくなる。そういう意味でも一、三塁と、一、二塁では全然違う。ダブルプレーも怖くなるし、ヒットを打ちにいかないといけないからね」。数字には表れないが、間違いなく勝利に直結する走塁だった。それをイヒネが体現し始めたことに、大西コーチは確かな手応えを感じている。
21歳が静かに燃やす野心
イヒネ自身も淡々とした口調のなかに、自慢の脚力をアピールするための強い意志をにじませる。「『いけるかな』と思ってチャレンジしました。確信まではいかないにしても、『いける』と思いながら走っていました」。限られた出場機会であっても、自らの価値を証明し続けている。
「ずっと走塁、守備固めで野球人生を終えるつもりもないですし。常に全力で全て頑張ってやっている中で、どうなるかだと思います」
その目にはレギュラーの座すらも虎視眈々と狙う野心が宿る。開幕まで残りわずか。「毎日全力で野球をしようと思います」。不器用なまでに真っすぐな言葉を残した21歳。次のステージで戦う準備はできている。
(飯田航平 / Kohei Iida)