藤原大翔を変えた執念「余裕がなくても」 どん底からの1週間…感覚掴んだ日常の“試行錯誤”

ファーム・リーグ開幕戦で好投する藤原大翔【写真:栗木一考】
ファーム・リーグ開幕戦で好投する藤原大翔【写真:栗木一考】

大役を終えた右腕がすでに見据える“次”

 たった1週間で驚きの変化を見せた。14日、ホークスの2軍はオリックスとのファーム・リーグ開幕戦に臨んだ。開幕投手に抜てきされた藤原大翔投手は6回を投げ、被安打4、1失点の好投。4回からの四者連続を含む計8奪三振という堂々たるピッチングを披露した。試合には1-2で敗れたが、右腕がマウンドで見せた躍動感あふれる姿は、開幕戦という重圧をはねのける、頼もしいものだった。

「いつも以上のピッチングはできたと思います。変化球でカウントが取れましたし、真っすぐでもどんどん押せていたので。自分のいいところを全部出せたと思います」

 晴れやかな表情でこう語った藤原だが、わずか1週間前は違った。7日の阪神との春季教育リーグに先発した藤原は、2回2/3を投げて6四死球、6失点という内容でマウンドを降りた。変化球が決まらず、直球を狙われた。制球を乱し、苦しむ姿があった。そんな状態から、なぜこの日の快投が生まれたのか。その裏には、開幕戦に照準を合わせた“行動”と、ある決断があった――。

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続きの内容は

「余裕がなくても」と右腕が解禁した“新球の秘密”
部屋でも握り続けたカーブの「抜ける感覚」
斉藤2軍監督が感心した1週間の「準備の成果」

“解禁”で広がった投球の幅

「フォームも見直しましたし、キャッチボールやブルペンでも意識しました。ずっとやってたんで、いい感覚を持って入れましたし、きょうは打者と勝負ができたというか。変化球も決まって、幅が広がったんじゃないかなと思います」

 試合後の藤原の顔には、充実感と自信が入り交じったような笑みが浮かんでいた。この日は110キロ台のカーブが冴えた。カウントを取ることもできれば、三振を奪う決め球にもなった。その要因は日常生活の中にあった。「ボールをずっと握って、試していました。どの持ち方が一番抜けるのかな、とか。部屋でもですし、体幹トレーニング中とかもずっとやっていました」。この1週間でカーブを抜く感覚を掴み、マウンドに上がったという。

 さらに投球の幅を広げた要因は、この日「解禁」したスライダーにもあった。カーブとチェンジアップが主だったが、これまで実戦で封印していた球種を交えた。

「試合で全然投げたことなくて。今までは『余裕があったら投げよう』という話をしていたんですけど、そういう場面がなかった。きょうは余裕がなくてもチャレンジしていこう、という気持ちで試合に入ったので使いました」。大一番で新球を試す度胸と、なんとか結果でアピールしたい気持ち。20歳右腕の可能性をさらに感じる瞬間だった。

笑顔でマウンドを降りる藤原大翔【写真:栗木一考】
笑顔でマウンドを降りる藤原大翔【写真:栗木一考】

「よく投げたな」指揮官が称えた奮闘ぶり

 ベンチで見守っていた斉藤和巳2軍監督も、藤原の奮闘に目を細めた。「立ち上がりはボール球がちょっと多かった部分はあるけど。3回、4回ぐらいあたりから少しずつリズムが出てきたので。6回はワイルドピッチで失点してしまったけど、よく投げたなって」。

 阪神戦の試合後に、開幕戦が「楽しみ」だと語っていた指揮官。「2軍ではあっても開幕という、彼なりに緊張感を持ってマウンドに上がったと思う。そういったことを考えると、十分なピッチングをしてくれた」。藤原がこの日のためにどのような1週間を過ごしてきたのか。その取り組みの成果が出たことに、嬉しそうな笑みを見せた。

 確かな自信を得た右腕は、すでに次を見据えている。「次もきょうぐらいのピッチングができればいいんですけど、そうじゃない日もあると思う。良くない時にどう修正できるか。試合中に修正できるようにやっていきたいなと思います」。新たな武器も手にした藤原。力みなく話す口調に頼もしさを感じた。

(飯田航平 / Kohei Iida)