野村勇、不安の“答え合わせ” 1年で激変も…理解する厳しい立場「今年ダメならクビ同然」

1月の自主トレ中に吐露していた「不安で仕方ない」

 2026年シーズン、鷹フルでは選手の思いに迫る新連載「鷹フルnote」をお届けします。今回は、レギュラー奪取に燃える野村勇内野手の登場です。「一生ネガティブですよ、僕は」。その言葉の裏側に滲むのは、確かな成長の足跡。春季キャンプを過ごす今は、まさに“答え合わせ”の最中です。数々の苦難を乗り越え、口にした問いかけ。「不安って、なくなったらどうなるんですか?」――。

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 1月、滋賀県で自主トレに励む野村は、こんな思いを吐露していた。「早くピッチャーと対戦したいですよ。不安で仕方ないので……」。今宮健太内野手のもとを卒業し、初めて1人で過ごすオフシーズン。周囲にチームメートもいなければ、自分自身の取り組みが“正解”なのかどうかを確認するには実戦で結果を出すしかない。球春の到来を、誰よりも待ち侘びていた。

 宮崎春季キャンプは2月21日に手締めが行われ、“打ち上げ”を迎えた。侍ジャパンとの壮行試合や台湾遠征を終えれば、いよいよオープン戦に突入していく。紅白戦などで結果を残している野村だが、単独自主トレから取り組んできた打撃面における“答え合わせ”はできているのか。少しだけ目線を上げて、手ごたえを明かした。

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続きの内容は

春季キャンプで伴コーチとのやり取りが少なくなった理由
「確実に一番下手」、どんな時も危機感を忘れない背景とは
“20年”で見つけた「自分流の打ち方」、絶対に必要な要素

打撃面で見つけた“方向性”…継続する筋トレ

「まだ始まったところなのでわからないですけど、入りとしてはすごくいいと思いますし、いい感じで打てています。まだ『これで合っていた』とまでは言えないですけど、フィジカルを生かした自分流の打ち方は、ちょっとわかってきているのかなと。基本的なところは去年から変えていないですし、オフの間に実戦の感覚はだいぶ開きましたけど。やってきたことが『失われていないな』とは思います」

 身体能力の高さは誰もが認めるところ。「メンタルの安定」を目的として始めたウエートトレーニングは、今も欠かさず継続している。「僕のバッティング的に、フィジカルが絶対に必要な打ち方なんです。技術はまだまだないですからね」。自虐的に笑うものの、プロの世界は結果が全て。様々な声に惑わされ、自分自身を見失う――。そんな姿はもうどこにもない。ようやく見つけた道筋を信じて、真っすぐに突き進んでいる。

「今までの野球人生では自分の打ち方を掴んでいなかったですし、20年くらいかかりましたね。でもまだプロで言えば5年目ですし。時間がかかったとも、早かったとも、両方思います」

野村勇と今宮健太【写真:栗木一考】
野村勇と今宮健太【写真:栗木一考】

少なくなった伴コーチとのコミュニケーション

 2025年は12本塁打を放ち、キャリアハイを記録した。躍進の1年を支えてくれたのが伴元裕メンタルパフォーマンスコーチだったが、今回の春季キャンプでは言葉を交わす姿をあまり見かけない。「去年は『何を考えたらいいか、どこに集中したらいいかわからへん』って時にめっちゃ話していましたけど、今はそこが定まってきている。伴さんも『集中できているな』っていうのがわかってくれていると思うので、お互いに言うことはそんなにないんじゃないかなと思いますね」。

 コミュニケーションを取らないのではなく、取らなくてもいい状態になったことは、野村の成長そのものだ。「気持ちの整理ができていなかったら、慌てないと仕方ないじゃないですか。今はもう、変に周りを見ることもないので。意外と落ち着いてやれているのかなと思います」。定位置争いの真っ只中にいるが、足元だけを見つめている。今年12月には30歳を迎えるプロ5年目。口にしたのは悲壮な決意、そして自らの“立ち位置”だった。

「プロ野球に入った以上はレギュラーになりたい。だけど、それを掴むのは絶対に今年しかないです。だから、難しいですよね。あかんかったらクビ同然じゃないですか。立場的に厳しくなってくるのもわかっているので。そこは去年と同じですよ」

遊撃を争う立場だが「ホッとしているとか、マジでないです」

 ネガティブな性格は、野村本人も認めている。メンタル面の成長を遂げた今も、“根”は変わらないという。「ホっとしているとか、マジで何もないですよ。守備は確実に一番下手ですし、技術があればなんとかできるんでしょうけど、それもないので。一生ネガティブですよ、僕は」。今の地位なんて、気を抜けばすぐに失ってしまう。いつも自分を突き動かすのは、強烈な危機感だ。

「不安って、なくなったらどうなるんですか?」

 誰しもが抱く感情。満足し、安心した選手から消えていく世界だ。1月の自主トレ中、眠りに就く前は必ず「俺、ほんまにきょうやり切ったかな」と自らに問いかけていた。球春が到来し、3週間。「今も怖いのは一緒ですけどね。人と比べるんじゃなくて、自分のルーティンがちゃんとできたか、出し切れているのか。そういうところは夜に考えます」。レギュラーという目標に向かって、一直線に進む。“どん底”を味わい、這い上がった男は強い。

(竹村岳 / Gaku Takemura)