リハビリ組で調整中、川口の現在地
もう一度、這い上がってみせる。栄光も挫折も味わった2025年。川口冬弥投手は新たな気持ちで2年目のシーズンに臨む。現在は腰痛からの復帰を目指し、リハビリ組で調整を続けている。タマスタ筑後の室内練習場には、黙々とトレーニングに打ち込む右腕の姿があった。
川口は2024年育成ドラフト6位で入団。昨年6月に支配下登録を勝ち取り、1軍では5試合に登板して防御率0.00を記録した。しかし、7月18日に登録抹消。再昇格することはできずに、シーズン終了後に腰痛でリハビリ組に合流した。そして、支配下登録からわずか4か月後の10月27日――。戦力構想外を通告され、育成契約を打診された。
11月16日に再びホークスでプレーすることを決断し、“再出発の日”から約2か月。右腕の口から飛び出したのは「今、すごく楽しいです」という前向きな言葉だった。笑顔の中に、確かな決意が見えたその一言。川口冬弥という投手の“現在地”が色濃く表れていた。
「誰しも投手だったら、『この人みたいに投げたい』という理想像があるじゃないですか。その投手たちと自分を比べて、『全然、素人だな』と思いながらやってきたので。だから腰を痛めて、壁にぶつかって。やっぱり体に負担がきていたんだな、怪我をするんだなと改めて感じて。素人の限界が来てしまっていたので」
実はシーズン中から、腰に違和感を覚えたことがあった。「股関節の使い方が下手だという自覚もあった」。それでも、25歳のオールドルーキーとして、この1年間を死に物狂いで駆け抜けてきた。そして、プロ入り後に様々な先輩と出会い、投球フォームや思考法など知識を吸収することもできた。だからこそ今、自分のフォームが負担のかかるものであることも認識し、冷静に見つめ直すことができている。
「今は正しく体を使うためのトレーニングができていて、それがすごく楽しいです。万全で投げられる時が楽しみというか。自分の理想とするフォームで、納得のいくボールが投げられるようになれば、1軍でもう一段階上のステージで勝負できるのかなと思っています」
「一度切りの短い野球人生で勝負するなら…」
現在は「ロスなくボールに力を伝えること」をテーマに、股関節の開きを抑え、体への負担を減らしながら出力を高めるフォーム作りに取り組んでいる。山本由伸投手(ドジャース)やジェイコブ・デグロム投手(レンジャーズ)らMLBのスターの名前を挙げ、「第一線で活躍し続ける投手には、フォームに個性はあっても、共通してできている動作がある」と語る。
「別にいいフォームが正解だと言いたいわけじゃないんです。でもどうせ一度きりの短い野球人生で勝負するなら、自分が納得できる体の操作をして、怪我なく過ごすのが一番いい。この1年は、そのための勉強と練習の時間だったんじゃないかなと思っています」
再び育成としてのスタートとなり、3桁の背番号を背負う。「その事実には落ち込みはしましたけど。また復活して、自分の姿を見てもらえるようにしたい。今は新しいことに取り組んでいる真っ最中なので」。見据えるのは2月後半の実戦復帰。前だけを見つめる右腕の表情は、明るかった。
(森大樹 / Daiki Mori)