谷川原健太が語る開幕戦の“失敗” 有原航平の謝罪もブレぬ意思…「すごく楽しかった」

谷川原健太(右)と有原航平【写真:冨田成美】
谷川原健太(右)と有原航平【写真:冨田成美】

球団に伝えた「捕手で勝負する」

「どのキャッチャーよりも多く試合に出たい」。その思いは、変わらない――。ハワイでの優勝旅行を終えた翌日、谷川原健太捕手の姿は、みずほPayPayドームにあった。「休んでいたので、やらないといけないです」。短い言葉に覚悟がにじんだ。

 今シーズンの開幕戦となった3月28日のロッテ戦でスタメンマスクを被った。プロ10年目のスタートを最高の形で踏み出したかに見えたが、先発出場した3試合はいずれもチームが敗戦。わずか10日後の4月7日に出場選手登録を抹消された。そこから約2か月半、待っていたのはファーム再調整の日々だった。

 開幕から2度の登板でともにバッテリーを組みながらも、黒星を喫した有原航平投手が谷川原に向けて口にした「申し訳ないと思っていることがある」――。谷川原はその記憶を改めて振り返った。9月以降は外野手としても起用され、出場機会を広げた28歳。打撃や守備でチームの勝利に貢献しながらも、変わることのなかった“捕手一本”で挑む覚悟とは――。

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有原投手の「ある言葉」が変えた谷川原選手の意識
完封勝利でも行われた、細川コーチの「厳しすぎる指導」
外野手起用を蹴った谷川原捕手の「来季の数値目標」

「有原さんが謝ることではないので。あれはやっぱり僕の実力不足。実績のあるピッチャーの力を引き出せなかった。でも、それをしっかりと受け止めて2軍生活で変われた。失敗したからこそ、今があると思っています」

 約2か月半にわたったファーム調整。6月20日に再昇格した後は、スタメンを外れた日でも投手陣と積極的にコミュニケーションを重ねた。同29日のロッテ戦では、先発の東浜巨投手を好リード。約3か月ぶりの先発マスクで、待望の“初白星”を手にした。

「会話の内容もしっかりしたものになりましたし、あの試合は2軍でやってきたことを出せた。自分の中でも、すごく大きかったと思います」

 谷川原が何度も感謝の言葉を口にしたのは、細川亨2軍バッテリーコーチの存在だった。特に印象に残っているのが、2軍戦後のあるバッテリーミーティングだった。「完封したのにミーティングをするというのは初めての経験でした。抑えて勝っても必ず反省点がある。今まで言われてこなかったことだったので……」。ブロッキングや配球、そして投手との向き合い方――。捕手としての基礎を一から見つめ直す時間となった。

捕手として「すごく楽しかった」一戦

 捕手一本で勝負してきた中で、シーズン終盤には外野手起用の打診を受けた。「1軍の試合に出られたのは良かった。でも、ずっとキャッチャーをやってきたこともありますけど、こだわりは捨てたくないです」。球団には来季も捕手で勝負したいとはっきり伝えた。

 今シーズン、スタメンマスクをかぶった11試合の中で「すごく楽しかった」と振り返る一戦がある。前田悠伍投手がプロ初勝利を挙げた、7月13日の楽天戦だ。「悠伍の1勝目を一緒に掴み取れた。キャッチャーとしてそういう場面でマスクを被るのは、やりがいの1つだと思います」。

 悔しさを糧に、視線はすでに来シーズンへ向いている。「今年悔しかった分、来年はそれを晴らすのが一番の目標です。去年の今の時期と同じ気持ちでしっかり入っていきたい」。目標は、正捕手として本塁打10本。2026年に向けた戦いは、もう始まっている。

(森大樹 / Daiki Mori)