千賀滉大に「褒められなかった」 杉山一樹が2年ぶり再会で気付かされた“伸びしろ”

  • 記者:長濱幸治
    2025.12.19
  • 1軍
メッツ・千賀滉大(左)と杉山一樹【写真:ロイター、古川剛伊】
メッツ・千賀滉大(左)と杉山一樹【写真:ロイター、古川剛伊】

千賀から誘われたトレーニング「どこで練習してんの」

 海を渡ったエースとの会話で、自らの“伸びしろ”に気付かされた。12月8日、筑後のファーム施設でトレーニングを共にしたのは、杉山一樹投手とメッツの千賀滉大投手だった。「千賀さんから『どこで練習してんの』みたいな感じで聞かれて、『ドームです』って言ったら『筑後でやるよ』って。嬉しかったですね」。杉山は“師匠”との再会に目を輝かせた。

「千賀さんが(2023年から)アメリカに行かれて以来、お会いしていなかったので。僕にとっては一番の師匠という存在に近いですし、僕がこの2年間で感じたことも含めて深い話もできました。まだまだ見えていないことも知れましたし、すごくいい時間でしたね」

 2020年1月、2人は自主トレを共にした。2年目を迎えた杉山のポテンシャルに対し、千賀は「群を抜いて杉山。僕も越された。それくらい凄かった」と目を丸くした。あれから5年――。今シーズンはセーブ王のタイトルを獲得するなど球界屈指のクローザーへと成長した右腕に投げかけた言葉は意外過ぎるものだった。

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続きの内容は

セーブ王獲得も…“師匠”に褒められなかった理由
千賀が指摘した杉山一樹の「真の課題」とは?
杉山が発見した「簡単に投げられる」ようになる鍵

「特に褒められたりはなかったですね。千賀さんがやろうとしている動きを、僕が全然できていないので。『できていないのにこれだけ投げれるのは、伸びしろがあるんじゃない』『逆に、なんでできていなくて今これなの』って感じでした」

契約更改交渉に臨んだ杉山一樹【写真:森大樹】
契約更改交渉に臨んだ杉山一樹【写真:森大樹】

■千賀から指摘された“身体操作系”…「すごく難しい」

“弟子”の活躍を単純に褒めるのではなく、まだまだ高見を目指せることを第一に伝える――。いかにも千賀らしい対応に、杉山の心は敏感に反応した。「千賀さんが取り組んでいることができるようになれば、『もっと簡単に投げられるんだな』みたいな感じになると思いますね」。そう語った表情には満面の笑みが浮かんでいた。

 千賀から指摘されたのは「身体操作系」だという。「身体をどう動かすかの部分での意識だったり、そのためにどこを強化するかという話ですね。千賀さんが言っていることはすごく理解できるんですけど、全く使ってこなかった部分っていうのもあるし、自分の癖もあるので。自分の中で持っていた考えが一致したところもあれば、逆に違う部分もあって、そこはすごく難しいですね」。

 千賀には自身が感じていることを包み隠さずに伝えた。返ってきた答えは「両方必要だから、両方やった方がいいんじゃない」。千賀は杉山の感覚を否定することなく、受け入れたという。「以前自主トレをした時よりも僕の理解度は上がっているので。僕としては『成長はしてるな』って」。当時に比べ、師匠の言葉がより自然としみ込んできた。その実感こそが何より嬉しかった。

「自分で見えていなかった課題までも、全部教えてくれたので。やっぱりさすがだなと思いました」。2年ぶりの再会を果た28歳。改めて気付かされた自らの伸びしろを、どん欲に追い求めていく。

(長濱幸治 / Kouji Nagahama)