小久保監督から指令「あいつになれ」 木村光が意識するライバル「追い抜いたろって」

木村光【写真:古川剛伊】
木村光【写真:古川剛伊】

木村光の胸にある小久保監督の言葉

 指揮官からの言葉に胸が熱くなった。「しっかり見てもらえている、期待されていると感じてうれしかったです」。そう口にしたのは、プロ3年目を終えた木村光投手だった。

 8月6日に今季2度目の出場選手登録をされると、以降は1軍に定着。13登板で防御率1.02、特に9月、10月は8試合に登板して無失点。シーズン終盤にかけて抜群の安定感を見せた。

 実は優勝争いが佳境に入った9月、みずほPayPayドームでの試合前練習中に小久保裕紀監督からある“指令”を受けた。伝えられたのは、明確な「目指して欲しい選手像」だった。同僚の尾形崇斗投手や上茶谷大河投手が先発調整を視野に入れる中、自身が思い描く投手としての“未来像”とは――。

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続きの内容は

小久保監督が名指しした「最強リリーバー」とは
将来的な「先発転向」の可能性と描く戦略
思わず漏らした「負けたくない」ライバルの名前

「お前、阪神の石井大智を見てるか? あいつみたいになれ。身長も似ているし、投げる球も似ているねんから」

 挙がったのは今季NPB新となる50試合連続無失点を記録した阪神の“最強セットアッパー”の名前だった。指揮官は入団1年目の2023年から2軍監督としてお世話になった存在。突然かけられた期待の言葉に「超えます」と思わず力強く即答した。

「単純にうれしかったです。1軍監督になって、喋る機会も少なくなっていて。でも小久保監督はできないことを絶対に言わないので。自分になら(石井のように)なれると思っているから言ってくださったと思う。でもだいぶハードル高いこと言っちゃったので頑張らないと」

 今季は中継ぎ投手として、調整のリズムや決め球のスプリット、そしてメンタルの安定など多くのきっかけを掴む1年となった。「(石井の)50試合と欲張らないで、まずは10試合単位で無失点に抑えていきたいです」と飛躍を誓った。

「将来的には…」投手として目指す姿

 来季の目標には「35試合登板」を掲げ、まずは中継ぎとして1軍で1年間フル回転することを目指す。一方で、その先に見据える投手としての将来像を尋ねると、右腕の口からは「先発」という言葉も漏れた。

「実際、自分は中継ぎの方が今は合っているかなとは思うんですけど。将来的には先発はやりたいです。でもまず先発より中継ぎで結果を残して、そこから。今、中継ぎで結果を残せなかったら、多分そこで終わりだと思うので」

 シーズン中、1軍でも機能したスプリットに確かな手応えを感じた。「中継ぎで結果を残して、ピンチの場面で『決め球』を使えるようになれば、もし先発になった時にも生きると思うので」。このオフには、縦のスライダーを磨くためにオリックス・山岡泰輔投手の自主トレに参加する予定だ。

「今正直、中継ぎの回り方を掴んできて。やっとそっちに慣れてきたので。なので今は別に(先発は)考えていないですね。まずは中継ぎとして結果を残したいです」。今、掴みかけている1軍での役割に集中している。

思わずこぼした「晴には負けたくない」

 同学年の存在は大きな刺激になっている。「晴には負けたくないです」――。真っ先に名前を挙げたのは今季6勝を記録した松本晴投手だった。「ああやって1軍で前を走ってくれる人がいるっていうのは、自分の中では大きいです。マエジュン(前田純)もそうですし、めっちゃ仲いいですけどやっぱり良きライバルなので」。

 まずは松本晴が今季記録した開幕12試合連続無失点を目指す。「ずっと晴に前を走られてるので悔しいっす。だからもうそろそろ追い抜いたろかなって」と笑顔を見せた。無失点の山を築き上げて、まずは1年間1軍で中継ぎとして投げ切る。そして最強のリリーバーになって、いずれは先発投手として――。そんな様々な未来を描きたくなる楽しみな25歳だ。

(森大樹 / Daiki Mori)