1軍最終先発で起きていた異変「実は…」 前田純の分岐点…口にした松本晴との“差”

前田純【写真:栗木一考】
前田純【写真:栗木一考】

前田純が痛感した“1勝の重み”

「1勝の重さをすごく感じた試合でした」。プロ3年目の2025年、1軍で10試合の先発を経験した前田純投手には、忘れられない1試合がある。左腕は静かに振り返った。

 今季は自身初となる開幕ローテーションをつかみ取ると、10試合に先発し2勝2敗、防御率3.12の成績を残した。しかし6月に登録抹消となると、8月には左肘の炎症でリハビリ組に合流。そのままシーズンを終えた。

 振り返ったのは1軍で最後のマウンドとなった6月18日の広島戦(マツダスタジアム)だった。2回にプロ初打席で2点適時打を放つと、4回まで無失点の好投をみせるなど、4-0と試合を有利に進めた。しかし5回、先頭から2者連続四球を与えると、残りアウト3つのところで無念の降板となった。自身が語ったのは、同期入団かつ同学年の松本晴投手との“差”だった――。

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続きの内容は

・「実は…」1軍最終先発で前田純を襲った”異変”の正体
・松本晴が甲子園で粘り抜き前田純が痛感した「勝負の差」
・「そんなタイプじゃないやん」前田純がリハビリで得た“悟り”

「実はあの試合、熱中症のような症状になっていたんです。ドームでずっと投げていた中で、急に屋外での登板になって、バテてしまったというのがあって。あと1イニング投げられれば勝利投手の権利でしたし、全然粘れたなと。自分で諦めちゃったというか、体をコントロールする根性がなかったのを感じました」

 猛省した左腕が自ら比較対象に挙げたのが、6月22日の阪神戦(甲子園)で5回2安打7奪三振1失点(自責0)で白星を挙げた松本晴だった。

「投手練習で(松本)晴と話をした時、『急に暑いところでバテそう』って話をしたんですよ。甲子園もめちゃくちゃ暑くて、晴も5回はつらそうだったんですけど、それでも抑えていたんで。そこが結構な差、今年の分岐点だったのかなと思いますね」

 その後、前田純は2軍調整。松本晴はその後も1軍での登板を重ね、6勝を挙げて日本一に貢献した。あと3アウト――。勝利投手の権利を手にすることができる「5回」というイニングの重さを痛感したシーズンだった。

気が付いた「そんなタイプじゃないやん」

「5回まで投げ切ると、気持ち的に油断して6回に打たれることもあって。2軍だったら経験もいっぱいしたので、毎回9イニング投げる気持ちですっと行けるんですけど。やっぱり1軍だと『新人』というプレッシャーなのか、初回から常に全力で投げなきゃっていう感じで。その1回、1回のステージが難しくて、すっといけなかったですね」

 俯瞰的に自分の投球を見られるようになったのは、8月に左肘の違和感でリハビリ組に合流してからだった。「怪我をしてから『そんなタイプじゃないやん』って気づきました。自分の長所を生かすというより、少し背伸びをしてしまった部分が強かった」。1軍にいるときは全力投球、で知らないうちに力で押し切ろうとしていた。

「結局『1軍と2軍じゃ訳が違う』って思いすぎちゃってたのかなって」。初めての1軍での先発ローテーションで経験した苦い記憶。しかし今後、先発として飛躍するためには必要な経験だったに違いない。

(森大樹 / Daiki Mori)