合致した2年半前の記憶 藤田悠太郎と藤原大翔の対戦…語った互いの現在地

藤田悠太郎(左)と藤原大翔【写真:飯田航平、竹村岳】
藤田悠太郎(左)と藤原大翔【写真:飯田航平、竹村岳】

高卒2年目の2人が対戦した日

偶然にも、2人の記憶は2年半前のある瞬間で合致した。高卒2年目の今季、1軍の舞台を経験した藤田悠太郎捕手と、育成投手として着実に歩みを進める藤原大翔投手。ともに福岡の高校からプロ入りした同期の2人が、今も鮮明に思い出すのは同じ試合、同じ場面だった。

 それは2023年の春季福岡県大会、飯塚高と福岡大大濠高がぶつかった一戦だ。藤田にとっては会心の一打であり、藤原にとっては痛恨の一球。対戦から月日は流れ、同じチームで1軍の舞台を目指すこととなった2人は、互いの姿をどう見つめているのだろうか。交錯した記憶から、それぞれの現在地に迫る――。

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続きの内容は

藤田が証言…ライバルを唸らせた「進化の証」
藤原が語る相棒とのバッテリー「信頼のリード術」
「僕はそんなに」…謙虚な言葉に隠された本心

勝負を分けた駆け引き…「次もいけるわ」

「3年春の飯塚戦で、大翔からホームランを打ったんです。自分もアピールしたい時の1本だったので、めちゃくちゃ覚えています。大翔は有名だったので。146キロの球をライトに打ちました」

 藤田の脳裏に焼き付いているのは、藤原から放ったライトへのアーチだ。高校通算43本塁打の中でも特に印象に残る一打。プロ入りへアピールしたい時期に生まれた1本は、特別な意味を持っていた。

 一方、マウンドでその打球を見送った藤原にとっても、その試合が高校時代で最も忘れられない一戦だった。「3年春の大濠戦ですね。悪い意味で印象に残っています」。13個の三振を奪いながら10失点。「普通、13個も三振をとったら勝てるじゃないですか。しかも、悠太郎に打たれたことが悔しいですね」。エースとしてのプライドを打ち砕かれた記憶として、深く刻まれている。

「1打席目に三振を取ったんで、『次もいけるわ』と思ってストレートを入れにいってしまって。それを打たれました。1打席目はスライダーが全然合っていなかったので、変化球でいけば抑えられたと思うんですけど。あの球場は狭いです。ここ(タマスタ筑後)だったら余裕でライトフライです(笑)」

 藤原は負けず嫌いぶりを前面に出しつつ、打たれた原因を振り返る。変化球に対応できていなかったことはわかっていただけに、悔いが残る1球になってしまった。その隙を、好敵手は見逃してはくれなかった。「スライダーが見えていなくて『どうしよう』と思っていました。僕はもう真っすぐ一本にしぼっていたけど、スライダーを狙う仕草を打席でして、真っすぐを張って打ちました」。藤田はしてやったりの表情だ。

かつての好敵手は相棒に…「投げやすい」

 あれから2年半の時を経て、プロの舞台に立つ2人。それぞれの現在地をどのように見ているのだろうか。「大翔は体が大きくなっているし、投げるボールもすごくなっています。僕はそんなに成長できていないかもしれないです」と、藤田は相棒の成長を口にする。自身のことは謙遜して語ったが、右腕にとっても、かつてのライバルとのバッテリーは特別なものになっている。

「3軍戦とかでバッテリーを組むんですけど、同級生というのもあって投げやすいです。試合中もコミュニケーションを取ってくれるし、自分の投げたいようにリードしてくれるので、ありがたいです。試合前に僕がどういうボールで勝負したいかを伝えて、それを考えてリードしてくれるので」

 マウンドと打席で火花を散らしたライバルは今、18.44メートルの距離で意思疎通を図り、ともに切磋琢磨する仲となった。忘れることができない記憶――。それは今後も互いが進化していくための原動力だ。2人がそろって1軍の舞台で躍動する日が楽しみだ。

(飯田航平 / Kohei Iida)