今宮健太から「来年は自分でやれ」 突き放された言葉も…桑原秀侍が感じた思い

桑原秀侍【写真:冨田成美】
桑原秀侍【写真:冨田成美】

尊敬する今宮から受け取った言葉

「チーム今宮」を離れ、師匠からのメッセージを胸に自分自身と向き合う。「来年こそ支配下にならないと、もうクビだと自分でも感じているので」。決意の表情でそう語るのは、来季育成6年目のシーズンを迎える桑原秀侍内野手だ。

 春季キャンプではA組にも抜擢された23歳。しかしシーズンが始まると序盤に打撃フォームを崩し、3、4軍での日々が続いた。6月21日のくふうハヤテ戦で今季2軍初出場を果たすと、2試合で5安打を放つなどアピールしたが、支配下登録には届かなかった。

 3年連続で今宮健太内野手のもとで自主トレを行ってきたが、今年は地元・熊本で1人で行う。背景には、師匠とのある“やりとり”があった。「本当にその通りだと思います」。突き付けられた言葉に、固い決意を口にした。

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続きの内容は

・今宮が突き放した「もう教えることはない」という言葉の全貌とは
・支配下へ、桑原秀侍が「脇を開けた」新打撃フォームに変えたワケ
・育成練習廃止のオフ、誰よりもバットを振る桑原が目指す「師匠との再会」

「お前の取り組むべきことはバッティングだから。もう俺のところに来ても何も教えることはないから、来年は自分でやれ」

 2軍のシーズンが終わった後、今宮にLINEで自主トレをお願いしたが、返ってきたのは断りの連絡だった。だがこの言葉は桑原自身、何度も痛感してきた事実だった。「やっぱり打撃技術を磨かないと。打てなければ支配下にはなれないと思うので」。明確な課題に目を向け、師匠の言葉を素直に受け止めた。

 これまでのプロ野球人生を振り返ると毎年同じ壁にぶつかっていた。「1年を通して見ると、悪くはないんです。少し打てなくて悩むことはあるんですけど」。今年、野手で唯一支配下に登録された山本恵大外野手は、2軍で打率.486という圧倒的な数字を残した。一方、桑原は開幕直後から調子を落とし、6月まで3、4軍で調整を続け、2軍昇格後にようやく調子を上げていった。

「7月31日の期限までに結果を出さなければいけないと思います。今年も去年も春先に全然打てなかった。これまでと何かを変えないといけないというのは感じていました」

打撃フォームの改良に着手

 新たな打撃フォームにも取り組んでいる。秋から、手を腕の前で構えるフォームから脇を開けて手を上げる形に大きく変えた。「どうしてもグリップが下がってしまうんです。そのまま出せればちゃんと芯に当たるんですけど、下げることによって(振り遅れて)ファールになったり、捉えたと思ってもフライアウトになったりすることが多かったので」。

 秋季教育リーグ「みやざきフェニックス・リーグ」が行われていた10月も、実戦ではなく筑後で黙々とバットを振り続け、フォームを体に馴染ませた。「今までよりも打球が綺麗に出るようになった」と、これまでにない手応えを感じている。

 今年は選手の自主性に任せるという方針で、これまで秋季練習後のオフシーズン期間に行われていた育成練習が廃止となった。そんな中、桑原は誰よりもバットを振り続けている。「ここで気持ちが切れていたら、1年を通して結果を出すことなんてできないと思っているので」。師匠からの言葉を胸に、桑原秀侍が目指すのは2桁の背番号――。そして共に1軍のグラウンドに立つことだ。

(森大樹 / Daiki Mori)