上沢直之から何度も指摘「絶対考えた方がいい」 木村光、飛躍の裏にあった“金言”

木村光(左)と上沢直之【写真:竹村岳】
木村光(左)と上沢直之【写真:竹村岳】

木村光は初めて離脱なくシーズンを戦い抜いた

「日本一はもちろんですけど、シーズン当初から1番の目標だった『1年間怪我せず戦い抜く』ことを初めてできた。それが一番大きかったです」

 2025年シーズンをこう振り返ったのは3年目を終えた木村光投手だった。8月6日に今季2度目の登録をされると、以降は1軍に定着。13試合に登板し防御率1.02、特に9、10月は8試合無失点と好投を続けて日本一に貢献した。

 飛躍の1年となったが、プロ入り後は故障との戦いだった。1年目の2023年は支配下昇格を果たすも、直後に胸椎分離症で離脱。昨年は右脚の疲労骨折と、育成から2桁の背番号を勝ち取っても実力を発揮できない日々が続いた。

 なぜ今季は1年間を通して投げ抜くことができたのか――。「悩んでいる時、相談できる先輩方がいたので」。特に大きかったのは、日頃から時間を共にした年上投手たちの存在だった。その中でも夏場、疲労が出始めた8月に上沢直之投手から繰り返しもらった“金言”は大きな支えになった。

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続きの内容は

・上沢が木村に求めた「力を抜く技術」とは
・木村が明かした上沢直之の「ゲラな一面」
・サイン拒否の裏で上沢が木村を「守った記憶」

「『キャッチボール、全力で放りすぎ。全力で投げる日も必要だけど、体の疲労が溜まるからキャッチボールも距離とか力の入れ具合を調整した方がいい。その日はフォームだけ意識して投げるとかを絶対に考えた方が良いよ』みたいなことを言ってもらいました」

 グラウンドでのキャッチボールを見た上沢から、ふと声をかけられた。先輩右腕が伝えたかったのは、長いシーズンを戦うために“力を抜く技術”を覚えることだった。「その時ちょうど肩の後ろが張って、関節が前に出て当たるような感覚があったんです。当たり前かもしれないけど、抜くところは抜くことって本当に大事なんだなと」。

 素直に助言を受け止め、その後も「またそう見えたら言ってください」と上沢にお願いをした。実際に3、4度の指摘を受け、その“癖”を矯正。疲れがピークに来ていた時期だけに、影響は大きかった。「だから最後に良いパフォーマンスができたと思います」。トレーナーとも話を重ねながら、怪我をしない体を作ることができた1年だった。

大きかった先輩の存在

 7歳年上の上沢とは入団後の春季キャンプでサウナに一緒に入ったことをきっかけに距離が縮まった。最初は恐る恐るだったというが、この1年で遠征先でも食事に行く機会も多く、一番の相談相手となった。「自分のしょうもない話でもめっちゃ笑ってくれる。実は“ゲラ”なんですよ」と笑う。

 意外なエピソードも明かしてくれた。「一緒にいるときに、サインができない場所で、強引に貰おうとしてくる人がいたんですけど、上沢さんがはっきりダメと言って、守ってくれた記憶があります」。グラウンド内外で支え続けてくれた先輩の存在は大きく、感謝の言葉が尽きなかった。

「次はやっぱり1年間を通して1軍にいて、歓喜の瞬間をもう一度味わいたいですね」。手応えをつかんだシーズンを経て、より高い景色を目指す。ホークスの未来を担う右腕の戦いは、これからも続いていく――。

(森大樹 / Daiki Mori)