「野球やりたすぎて…」抑えきれず前田純がとった行動 画面越しの日本一に漏らした“渇望”

前田純【写真:竹村岳】
前田純【写真:竹村岳】

離脱して約3か月…前田純の現在地

「シーズンの終盤は、試合で投げて終わりたいという焦りもありました。でも今は切り替えて来年、勝負できるようにしっかり準備をしています」。そう話すのは、左肘の炎症のためリハビリ組で調整を続ける前田純投手だ。

 3年目の今季は開幕ローテーションに名を連ねたものの、6月19日に登録を抹消され、10試合の登板で2勝にとどまった。7月末の2軍戦で左肘に違和感を覚え、8月上旬からリハビリ組に合流。それ以降、実戦に復帰することなくシーズンを終えた。

「試合勘がなくなっていくのをすごく感じました」。1軍が日本シリーズ、2軍はみやざきフェニックス・リーグを戦う中、自身はリハビリの日々。そんな状況にもどかしさを抱えていたという。テレビ画面越しに見たチームの5年ぶり日本一に、素直な本音を語った。気を紛らわせるために思わず取った驚きの行動も明かしてくれた。

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続きの内容は

野球への“渇望”を埋めた、驚きの行動と「ゲームの行方」
前田純がテレビ越しに学んだ「モイネロと大竹の秘密」
5キロ増量の成果と、来季「重い球」を投げるための秘策

「野球をやりたくてしょうがなくて、ゲームで試合をしていました(笑)。『MLB The Show 25』というPlayStationのゲームをやって、気を紛らわせていましたね」

 リハビリ中の10月、テレビをつければ日中はメジャーリーグのポストシーズン、夜はクライマックスシリーズ・ファイナルが行われていた。最高峰の舞台を目にし、野球への思いが抑え切れなくなり、思わず体が動いてしまったという。「(ゲームの中で)ドジャースを世界一にして、今はフィリーズを世界一にしようとしています」と笑った。その笑顔の裏には野球への“強い渇望”がうかがえた。

「怪我をしてから、ドームにも2、3回行きました。投げられない時期で練習もできなかったので、大学の同級生と観に行きましたね。テレビでも日本シリーズを見ながら、(リバン・)モイネロがすごい投球をしていたし、大竹(耕太郎)さんの投球内容を見て勉強していました」

目に焼き付けた日本一「あの舞台は…」

 当初は早く投げたい、試合で投げてシーズンを終えたい、という焦りもあった。9月30日にはブルペンにも入るなど調整を進めていたが、今は来シーズンを見据え、ウエートトレーニングやランニングといった体作りを重点的に行っている。

「気温も下がってきたので、出力を無理に上げるのは良くないんじゃないかという話になりました。今は前向きに、来年しっかり勝負できるよう良い準備はできていると思います。あとは肘の状態次第ですね」

 体作りの成果は、目に見えて現れていた。体重はリハビリ合流前より約5キロ増え、がっちりとした姿が印象的だった。「まだ投球の出力を上げる段階ではないですけど、体重を乗せて重い球を投げられるイメージはすごくあります」。課題と向き合い、確かな手応えを感じているようだった。

「日本一、あの舞台を経験したいですね。本当にビールかけがしたいです」。テレビ越しに見たチームの歓喜に、思わず本音がこぼれた。2025年は初めて1軍の先発ローテーションを経験した。来年はよりパワーアップした姿で1年間勝負できるように――。前田純の表情は明るかった。

(森大樹 / Daiki Mori)