“チーム牧原”から独り立ち 緒方理貢の決断を促した師匠の思い「このままじゃ…」

牧原大成、緒方理貢【写真:竹村岳】
牧原大成、緒方理貢【写真:竹村岳】

5年目の今季は自己最多の101試合に出場

 3年間通い詰めた「牧原塾」を卒業し、自らの足で“道なき道”を歩むことを決断した。「ずっと付いて行くわけにもいかないですし、自分の課題も分かっているので。しっかりと詰めて、来年戦えるようにやります」。力強く言葉を発したのは、来季6年目を迎える緒方理貢外野手だ。

 2023年から3年連続で牧原大成内野手に師事し、自主トレを共にした。昨季の開幕前に支配下登録をつかみ取ると、シーズン終了まで1軍に帯同した。今季も自己最多の101試合に出場。代走、守備固めと難しい役割を高いレベルでこなし、首脳陣の信頼を勝ち取ってきた。同じ育成出身の先輩の背中を追いかけたことで、自らの立ち位置を築いた。

 今オフも師弟タッグは健在かと思われたが、緒方が選んだのは「独り立ち」だった。決断の背景にあったのは“師匠”の一言。「来年は1人でやれよ」――。あえて後輩を突き放すかのような言葉には、確かな優しさがあった。

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続きの内容は

・牧原大が後輩に伝えた「このままじゃ」…込めた真意
・緒方が見つめ直す課題「自分でわかっているので」
・“手負い”のまま戦い抜いた27歳…取り去った懸念とは

「ずっと同じだと“慣れ”が出ちゃうので。あいつにとっても来年が勝負だと思うし、このままじゃどうかなと。もう誰かの下でやっていく立場でもないと思うし、1軍でもずっとやっているので。殻を破るというか、これからは自分でいろいろと考えながらやってほしいなっていう思いはありますね」

牧原大から学んだ魂「きついことがあってもめげない」

 牧原大自身もかつては松田宣浩さんに師事し、実力をつけていった。その後に独立し、昨オフの自主トレでは「チーム牧原」として緒方だけでなく4人の育成選手とともに汗を流した。「ある程度の形は教えたし、元々技術を教えるとかではなかったので」。可愛い後輩が今後プロの世界でどう生きていくのか――。2026年が大事な1年になることを分かったうえでの「親心」だった。

 その思いは緒方にもしっかりと伝わっている。「しっかりとした形を見つけるとか、もうそういう段階でもないと思うので。とにかくバットを振って、いいものを(首脳陣に)アピールしていかないといけないなと思っています」。今季の打率.216に現れているように、課題は明確だ。

 2025年はチームが日本一に輝いたが、緒方自身は決して満足していない。「まだまだ全然です。やっぱり頭から試合に出たいですし、そのためにはバッティングが大事なので。とにかく打てるようになりたいですね」。今オフは筑後のファーム施設で1人、自らの打撃を見つめ直すつもりだ。

 勝負の来年に向けて“懸念”も取り去った。今年8月15日のロッテ戦(みずほPayPayドーム)で一塁にヘッドスライディングした際に左手の親指を痛めた影響は、シーズンが終わるまで続いていた。「感覚的に戻らなかったので、きつかったです。それでも、やれることはあると思ってたので。『怪我したからといって抜けないぞ』という思いでやっていました」。ようやく戦いの日々は終わり、11月に入って患部にPRP注射を打った。

 牧原大の自主トレからは離れるが、先輩から引き継いだ魂が消えることはない。「教わったのは、やっぱり気持ちの部分ですね。きついことがあってもめげない。どんな状況に置かれても、自分がやることはやるっていう姿勢をしっかりと持っている方なので。そういうところはこれからも大事にしていきます」

 育成出身選手で初の首位打者に輝いた師匠の姿はしっかりと目に焼き付けた。次は自分の番――。自らの足で険しい道を歩く覚悟を決めた27歳。便利屋で終わるつもりは毛頭ない。

(長濱幸治 / Kouji Nagahama)