日本Sの舞台裏…周東佑京に訴えた“プロの誇り” 重圧から解放された牧原大成の涙

日本一になり涙を浮かべる牧原大成と、会見に出席した周東佑京【写真:産経新聞社、竹村岳】
日本一になり涙を浮かべる牧原大成と、会見に出席した周東佑京【写真:産経新聞社、竹村岳】

野村勇の決勝弾「めちゃくちゃ嬉しかった」

 広報に転身して5年目のシーズンで初めての日本一を経験した西田哲朗広報。リーグ優勝から日本シリーズ制覇まで駆け抜けたチームの裏側を語ってもらいました。周東佑京内野手から投げかけられた“素朴な疑問”。少しだけ逡巡した結果、西田広報が伝えたのは「明確な意思」でした。また中村晃外野手と言葉を交わした朝の出来事も。初戦に敗れた頂上決戦、ホークスの底力を信じていた2人のやり取りとは?

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 日本シリーズ第5戦、(野村)勇が(決勝の)ホームランを打った時はめちゃくちゃ嬉しかったです。最後は(川瀬)晃がアウトにして、試合が終わりました。喜びはほんの一瞬、すぐに仕事のスイッチが入りました。満員の敵地・甲子園の中で、どうやって“日本一の対応”ができるのか。僕もプロとして燃えましたし、かなり違う緊張感はありましたよ。場内からチーム宿舎でのブース回しまで、僕としても完璧にやり切るつもりでした。

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続きの内容は

・周東佑京に伝えた広報の熱い「プロの宿命」
・初戦敗戦翌朝、中村晃が語った「真の底力」
・牧原大成が握った「7番ユニホーム」に秘めた想い

 オフシーズン、選手にテレビ出演してもらうことはあるんですけど、僕としては日本一を達成して受ける取材を一番大切にしようと思っていました。だって“最高の露出”じゃないですか。疲れているとは思うんですけど、選手たちもいい表情をしてくれますから。応援してくださっているファンの方々にいろんな素顔を届けていけるように、少しでもいい形にしたいと思っていました。

周東選手から「なんでこんな取材受けるんですか」

 日本シリーズ中、印象的なやり取りがありました。周東選手が「なんでこんなに毎日、取材を受けるんですか」と僕に声をかけてきたんです。彼は今季が8年目。選手会長も2年間務めて、ものすごく責任感が強い人間です。だからこそ、なぜ取材が大切なのか、しっかりとした言葉で意図を伝えないといけないなと思いました。

 1つは、誇りを持つということです。日本において野球は注目度が高いし、影響力もあるスポーツ。もちろん他の競技をリスペクトしていますし、勘違いして言うわけじゃないですけど、「1番」という感覚を持って僕は仕事に取り組んでいます。それがないと広報は務まらない。僕たちはホークスの一番の応援隊。なぜスポーツ紙にこれだけ野球が載るのか、なぜこんなにテレビで流れるのか。それを理解したうえで取材を受けていれば、少し考えも変わるんじゃないかなと。

 もう1つは、野球界の発展のためです。もちろん取材に答えたくない時もあるはず。だけど、これまでOBの方々が見せてきた“あり方”。それもホークスの伝統だと思いますから。「話す」というのは野球選手である以上は宿命だし、日本のプロ野球選手にはそれだけの影響力がある。今の自分たちがやっていることを、いつかは後輩たちがやることになるんですから。スポーツ界を代表する選手たちを少しでも多くの人に知ってもらうという意味でも、僕たちには大切な役割があります。それは僕なりの言葉で周東選手にも伝えましたね。

日本シリーズ第1戦で敗戦…翌日の朝に交わしたやり取り

 日本シリーズは4勝1敗。10月25日の1戦目には敗れました。次の日の朝、(中村)晃さんとお話しする機会があったんです。「これでよかったと思います」って。去年は1、2試合目に勝って、そこから4連敗したじゃないですか。もちろん重要な初戦なので勝つに越したことはないんですけど、「簡単にいける」という感覚が出てはいけない。2024年とは違った形で日本シリーズが始まって、逆によかったと思います。「きょう勝ったらドンっていくと思いますよ」って話していたら、晃さんも「そうなればいい」って感じで言っていました。

 日本一になる直前、ベンチの牧原(大成)が7番のユニホームを持っていました。晃さんとの関係性も深いし、長年一緒にやってきた先輩。見ていても「俺が持つ!」って感じでしたね。ものすごくドラマチックで美しいシーンだったと思います。

 牧原大に「どんな涙だったのか」というのは、僕もまだ聞いていないのでわからないです。でも、1年間チームを背負ってきたのは間違いない。15年目でようやく規定打席にも立って、首位打者になって、日本一に貢献できた。やっと終わったっていう、ほっとした涙だったのかもしれないですね。彼も取材のタイミングをものすごく大切にする。日々ペナントレースを戦う中、緊張感を解かない選手なんです。野球選手としてのペースがありますし、厳しい考えを持っていますから。解放されたところもあったのかなって。僕も嬉しくなりましたね。

 日本一になったことで、2026年はより厳しいシーズンになるはず。小久保(裕紀)監督が言っているように、プロとしての意識を持っていないといけないですから。僕たち広報の仕事というのは、ファンの人たちからは何をしているかわからないと思われている。「こんなことをやっているのか」となるかもしれないですけど、もっと広報の仕事を知ってもらえたら野球界の発展につながるかもしれません。その他にも、いろいろと考えていることがあるので。来年もプロとして、自分の役割をまっとうしていきたいです。そしてホークスファンの皆さん。1年間、たくさんの応援をありがとうございました!

(竹村岳 / Gaku Takemura)