戦力外の現実に「候補の筆頭」…“育成最年長”の2人が明かす本音「シビアとは感じない」

大泉周也(左)と大友宗【写真:竹村岳、飯田航平】
大泉周也(左)と大友宗【写真:竹村岳、飯田航平】

大泉&大友の「1999年世代」…4人が戦力構想外に

 ソフトバンクは今オフ、20人の選手に来季の契約を結ばないことを通達した。その半数となる10人が育成選手だった。今年のドラフトで8人の育成選手を指名するなど、支配下への道のりは12球団で最も険しいホークス。過酷な環境で何を思うのか――。“育成最年長”となる大泉周也外野手と大友宗捕手に本音を聞いた。

 ともに汗を流した仲間たちとの別れは、決して他人事ではない。「覚悟はしてましたよ。当然、可能性がなくはないとは思っていました」。そう口にしたのは2023年の育成ドラフト1位で入団した大泉だ。来季が入団3年目の26歳は、大友と同じ「1999年世代」。同学年での育成選手は澤柳亮太郎投手を含めて3人。今オフは育成の水口創太投手のほか、支配下でも長谷川威展投手、田浦文丸投手、川口冬弥投手が戦力構想外となった。

 大泉と大友は社会人、独立リーグを経たという点でも共通点がある。決して「エリート街道」を歩んできたわけではない2人。いつ訪れてもおかしくない「クビ」の2文字。その受け止めは限りなく近いものだった。

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続きの内容は

大泉、来季への「覚悟」と戦略は?
大友が語るホークスの「厳しさ」の真実
2人が明かす「メンタル」の課題と対策

「正真正銘じゃないですか、来年こそは。本当のラストチャンス。もちろん自分も若くないので、そういう立場の筆頭であることは自覚しています。それでも今はもう、自分のやることをやりたいですね。自分の野球人生なので。考えたってしゃあないって感じです」

 大泉の表情に暗さはなかった。むしろ、その目には炎が宿っていた。それは“自分のやること”が明確になっているからだ。「今年は2軍でインパクトを残せなかったので。山本(恵大)みたいに、短期間でガッていうのがなかった。尻上がりじゃなくて、1、2か月であっと言わせるようなインパクトを残したいですね」。名前を挙げたのは、こちらも同学年の山本だった。

 今シーズンのファーム非公式戦で大泉は68試合に出場し、打率.397、8本塁打、54打点という圧倒的な成績をマーク。2軍でも32試合の出場で打率.267とまずまずの数字を残した。「去年は夏場にバテたところもあったんですけど、今年の夏は逆にガッと数字を上げて、最後までやれたので。そこはシーズンを通した体力的にも、試合数にも慣れてきたんだろうなって思います」。勝負の来年に向けて手応えは掴みつつある。

 一方で、課題を感じたのはメンタル面だったという。「やっぱり『打ってやろう』という気持ちが強すぎて、自分のやるべきことに集中できていなかった。3軍では自分のバッティングに集中できていたんですけど……。2軍でも、もちろん打たなきゃいけないんですけど、考えすぎたところもあったので」。舞台が上がるにつれて、自らに課す重圧も大きくなる。分かってはいても、実際に体験できたことは大きなプラスとなるはずだ。

大友が語った感謝「メキシコやアメリカでも…」

「(戦力構想外を告げる)電話が来てもおかしくないなとは思っていました」。そう振り返ったのはルーキーイヤーを終えた大友だった。25歳での入団というオールドルーキーは、ホークスという過酷な環境にも弱音を吐くことはなかった。

「『ホークスはシビアだ』って、みんな言うじゃないですか。でも僕はそうは感じないですね。やっぱり1軍で必要とされなければ、切られる世界。実際にメキシコやアメリカの独立でも結果が出なければ1か月で切られるっていう話も聞きますし。そういう意味では残り1年契約してもらえるだけでも本当にありがたい限りです」

 大友も今季の非公式戦では44試合に出場して打率.379、5本塁打、20打点と好成績をマーク。一方で2軍では打率.233、1本塁打とその打棒は影を潜めた。「一番に感じたのは、2軍で自分のプレーができてないなと。3軍ではできるのに、2軍だとできないことがやっぱり多くて。どこかで力んでしまったり、歯車がうまく合わなかったりが多かった1年でした」。課題は大泉と同様、メンタル面にあると分析した。

 それでも「2軍にいけばピッチャーのレベルは上がりますけど、3軍とそんなに差があるかと言われれば、そこまでめちゃくちゃあるわけじゃない」と相手のレベルに圧倒されたわけではなかったという。「1年目でうまくいかなかったことを整理して。どう試合に臨むのか、準備の部分ももう少し明確にしたいなと思います」とすっきりとした表情で前を見据えた。

「ホークスに入った時から1年1年が勝負というのは頭にあったので。変えることなくやっていきたい」と大泉が言えば、「来年がもしうまくいかなかったとしても、100%を出してダメなら仕方ないと思えるので。1日1日を悔いなく過ごすだけです」と大友も力を込めた。狭き門をこじ開けるだけの力が、2人にはあるはずだ。

(長濱幸治 / Kouji Nagahama)