画面越しに見た日本一「このままじゃダメ」 球団に伝えた“意思”…石塚綜一郎の新しい挑戦

石塚綜一郎【写真:竹村岳】
石塚綜一郎【写真:竹村岳】

リーグ優勝目前の9月24日に2軍降格した

「ベンチからしっかり1軍の試合を見ているつもりではいたんですけど、まだまだ見えていないんだなっていうのを改めて感じました」。チームが5年ぶりの日本一に輝いた裏で、秋季リーグ「みやざきフェニックス・リーグ」で今シーズンを終えた石塚綜一郎捕手が、そう振り返った。

 フェニックス・リーグでは、途中からチームを率いた斉藤和巳3軍監督のもと、三塁ベースコーチを選手が務めたり、内野、外野にリーダーを置いたりするなど、選手自らが状況判断や守備位置を考えながら試合に臨む新しい試みが行われた。

 石塚は、リーグ優勝目前の9月24日に2軍降格を告げられた。日本シリーズでは40人の登録枠に入ったものの、出場機会がないままシーズンが終了。守備や走塁でも悔しい思いをし、「野球脳を鍛えていかないといけない」と痛感するシーズンだった。それでもこのフェニックス・リーグでの試みを経て、試合への見え方が変わり始めていた――。

会員になると続きをご覧いただけます

続きの内容は

・石塚が見つけた「第三者の目線」とは
・柳田の一打が石塚に与えた「決意」
・石塚が始めた「新たな挑戦」その内容

「自分から主体的に動こうとする意識がどんどん大きくなって、頭をすごく使っている感じがします。今までは自分のことで精一杯だったんですけど、もっと周り見て、他の選手に指示したり、『あれ、ここはどうなんだろう』と考えることが多くなりました」

 三塁ベースコーチや内野手のリーダーを務めたことで、今までとは違った野球の景色が見えた。これまではコーチの指示にただ従っていたが、自ら考えて指示を出す側に回ることで新たな視点が得られた。特に三塁コーチの位置から見た景色は、自身の課題を浮き彫りにした。

「1軍だとどうしても目の前の自分のことにしか集中できませんでした。1年間ずっと自分の成績のことや結果を残したいと、そこばかり考えていました。成績を見て『悔しい、やらなきゃ』って。でも今のままじゃダメだと思いました。外から見ると、ミスってやっぱり目立ちます。『自分の中ではちょっとミスしたな』くらいでも、周りから見ると指摘したくなるような場面がある。第三者の目線を持つことができましたね」

心を揺さぶられた柳田の同点2ラン

 チームがポストシーズンを戦う姿を、テレビの前で複雑な思いを抱えながら見つめていた。40人枠に入りながら日本シリーズの舞台に立てなかった悔しさは大きかった。

「出場できる権利はあったので。正直見ている時は複雑でした。でもあそこ(1軍)で活躍しないといけない。『1軍選手ってこうやって走る、こう守る』というのを、見て学ばなければいけない。どちらかというと、そこをメインで見ていましたね」

 チームに求められる役割も再認識した。日本シリーズ第5戦で柳田悠岐外野手が放った劇的な同点2ラン。「あそこでホームランを打てるのはすごい。あそこしかないっていう場面で打つ」と心を揺さぶられた。「長打を打てる右バッターが中々いないので、そういう選手になっていかないといけない」と決意を新たにする。

石塚が始めた“新たな挑戦”

 フェニックス・リーグを終えると、新たな挑戦として三塁の守備練習を開始した。過去にも三塁守備の経験はあるが、シーズン中から「やりたい」と球団に伝えていたという。

「出場機会の幅を広げるためですね。シーズン中にいきなりやるのは厳しかったので、オフシーズンになった今、とにかく挑戦してみようと。やるだけやってダメなら仕方ない、という思いです」

 来季は7年目のシーズン。今季は3か月近く1軍に帯同したが、24試合の出場で60打席にとどまり、“試合に出る”という壁にぶつかった1年だった。「まずは試合に出られるように。代打でも、途中からでも任せてもらえるような選手になりたい」。来季こそは日本シリーズの舞台へ――。強い覚悟でオフに自身を鍛え抜く。

(森大樹 / Daiki Mori)