育成2年目の19歳・佐倉がフェニックス・リーグで3HRの大活躍
「最初はホークスでチャンスをもらいたかったという気持ちもありました。でも、自分の中ではホームランを打てないといけないと思ってきた中で、今こうして打てているのは良いことだと思います」
育成2年目の大砲候補、佐倉侠史朗内野手が、秋季教育リーグ「みやざきフェニックス・リーグ」でその才能を開花させようとしている。佐倉はくふうハヤテへ23日までの期間限定で派遣され、2軍の投手を相手に3本塁打を放つなど、持ち前の長打力を発揮した。
23日をもって終了した派遣期間。当初は悔しさも抱えていたというが、この期間に得た確かな手応えの裏には、「うれしかった」と語る斉藤和巳3軍監督からの心遣いがあった。
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続きの内容は
・斉藤監督が佐倉に送った「心温まる言葉」とは?
・佐倉が明かす、好調を支えた「肉体改造の秘密」
・1軍投手との対戦で佐倉が感じた「実力と課題」
「ここ(くふうハヤテ)に来ても、ホークスは見てくれているのかな、という不安がありました。でも、僕が打つと情報が出るじゃないですか。その時に、色々な方から連絡をいただきました」
8日のヤクルト戦では1本塁打を含む3安打3打点、13日のオイシックス戦では2本塁打を含む5安打5打点と大暴れ。その活躍のたびに連絡をくれたのが、今回のフェニックス・リーグでホークスを率いている斉藤和巳3軍監督だった。
「ホームランを打った時に、『よく打ってるね』といった連絡をいただきました。ホークスとの試合前日にもくださいました。支えというわけではないですけど、見てくれているんだなという安心感がすごくあります」
佐倉にとって斉藤監督は、入団1年目の4軍時代から今季の3軍まで指導を受けた最も馴染みが深い指揮官だ。その存在の大きさを佐倉はうれしそうに語る。
「一番長く一緒にいる監督なので、ホークス戦で対戦した時はすごく不思議な感じでした。ずっと見てくれている人がいたので、逆に気楽にプレーできたというか。(ソフトバンクベンチから)いじられているなと思いながら(笑)」
佐倉が明かす好調の要因
フェニックス・リーグでの好調の要因は、明確な意図を持って取り組んだ肉体改造にあった。春季キャンプ後から本格的に減量に着手し、一時は110キロあった体重を98キロまで絞り込んだ。
「自分の弱点に、速い真っすぐをなかなか打てないことがあって。飛ばす力は必要なんですけど、速い球を打てないと上には行けない。体のキレやスピードを上げるために、色々な方と話して減量を決めました。普段よりは打てるようになったかなと思います」
この決断が功を奏し、今季は長打が明らかに増えた。「体を大きくする人たちが多い中、僕は逆に絞らないといけなかったので大変でした」と振り返るが、その成果は非公式戦でのチームトップ11本塁打、そしてこのリーグでの3本塁打という結果に表れている。
打席で感じた“迷い”「実力不足」
17日のホークス戦には「5番・三塁」で出場。「特別な気持ちで臨んだ」という一戦で、津森宥紀投手や浜口遥大投手ら、1軍経験豊富な投手と対戦した。結果は3打数無安打1四球だったが、そこには大きな収穫があった。象徴的だったのが、津森と対峙し空振り三振に倒れた6回の第3打席だ。
「津森さんの初球のストレートを見た時に『このタイミングじゃ打てないな』と感じました。その後に変化球が来て、打席の中で迷ってしまったんです。実力不足もそうですし、打席の中でどう戦っていくかを考えていかないといけないなと。打てませんでしたが、1軍で投げるピッチャーと対戦できたことは、すごく収穫になりました」
最初は自チームの中でチャンスをもらいたかったという悔しい思いから始まった派遣生活。それでも今はこの環境を大きなプラスと捉えている。「違う環境に身を置くことで、野球の面でも生活面でもつかめるものがある。そう考えながら野球ができているのは、すごく良いことだと感じています」。
高校通算31本塁打の実績を誇る大砲候補も、今季の2軍戦出場はわずか1試合に終わった。この悔しさと手応えを胸に、来季の飛躍を誓う。「来季は支配下を狙っていかないといけない。キャンプから100%の状態で入れるように、今年のシーズンがもったいなかったと思わないように頑張りたいです」。大きなポテンシャルを秘めた19歳が、覚醒の時を迎えようとしている。
(森大樹 / Daiki Mori)