「何してるんやろ」 苦悩の宮崎調整…津森の身に染みた斉藤和巳監督の“言葉”

斉藤和巳監督(左)と津森宥紀【写真:森大樹】
斉藤和巳監督(左)と津森宥紀【写真:森大樹】

津森が19日から1軍に合流

「帰ろうかなって荷物をまとめてたんですよ。そしたら呼ばれました」。18日、秋季教育リーグ「みやざきフェニックス・リーグ」のDeNA戦後。アイビースタジアムでは、津森宥紀投手が大慌てでユニホームや練習着をバッグに詰める姿があった。

 レギュラーシーズンが終了し、クライマックスシリーズのファイナルステージを迎えても、津森は1軍に登録されたままだった。しかし、その舞台に立つことはできず、宮崎の地で調整を続けていた。「もし、きょう抹消されたらもうずっと(1軍)登録無理や」。フェニックスリーグ中には不安を漏らすこともあった。

 そんな中、かかった1軍合流の声。「自分のやるべきことをしっかりやってきた」とその表情には自信がのぞく。複雑な思いで参加していたフェニックス・リーグ。1軍投手コーチ時代から津森を知り、現在は2軍を率いる斉藤和巳監督から、こんな言葉をかけられていた。

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斉藤監督が津森へ贈った「魂の言葉」とは
リーグ優勝を別地で知った津森の本音
ラストチャンスに懸ける右腕の「決意」

「これだけの実績があるんやから。今ここにいる現状を考えたら、みんなと合わせてやってるようではあかんよね。今年で終わりじゃないわけだから。また呼ばれることがあるわけやから。しっかりやっとけよ、と」

 斉藤監督が伝えたのはいつ呼ばれるかわからないからこその心構えと、前向きに野球に取り組む姿勢だった。1軍合流を伝えられた後、津森はこの言葉を噛みしめていた。「『しっかり準備しておけば後悔はない』と。確かにそうだなと思いました」。

 1軍に登録されたまま宮崎での調整を続ける日々は、「正直、悔しい思いの方が大きかった」と本音を漏らす。それでも、前を向いて腕を振り続けた。「状態を上げてきてくれと言われていた中で、良い球も増えてきています」。確かな手応えを胸に、福岡へと向かった。

2軍遠征先で見届けたリーグ優勝

 4年連続で45試合以上に登板してきた右腕も、今季は22試合の登板にとどまった。シーズン終盤には右肘の違和感で離脱。9月27日のリーグ優勝の瞬間は、2軍戦の遠征先だった名古屋のホテルで見届けた。チームの歓喜の輪に加われなかった悔しさは、何よりも大きかった。

「複雑でした。悔しい気持ちと、チームの一員として嬉しい気持ちと……。自分は何をしているんだろうと、色々な感情がありました」

 しかし、突然ラストチャンスが舞い込んだ。今度こそ、CS突破、日本一の瞬間をチームの輪の中で迎えるために――。「チームの力になれるように頑張ります」。津森は大きな荷物を持ち、決意を胸に宮崎を後にした。

(森大樹 / Daiki Mori)