突然告げられた他球団派遣「この試合は絶対…」 中澤恒貴の覚悟、斉藤和巳監督も評価した“姿”

ソフトバンク戦で2ランを放った中澤恒貴【写真:森大樹】
ソフトバンク戦で2ランを放った中澤恒貴【写真:森大樹】

中澤が東浜から“幻の2ラン”を放った

“幻の2ラン”に両軍ベンチが湧いた。「完璧な当たりでしたけど、入るとは思わなかったです。驚きでした」。こう振り返ったのは、ソフトバンクからオイシックスに派遣されている育成2年目・中澤恒貴内野手だった。

 11日に行われた「みやざきフェニックス・リーグ」のオイシックス戦。2番・指名打者で出場すると、初回無死二塁で東浜巨投手の真っすぐを振り抜き、左翼席へアーチを架けた。試合は初回で雨天ノーゲームとなったが、強烈なインパクトを残した。

「上手く打ったよね。あの1打席だけでここ数試合の成長とは言えないかもしれんけど、うれしい一発でした」。試合後、2軍を率いた斉藤和巳3軍監督は“敵”ながらも中澤に称賛の言葉を送った。この言葉を本人に伝えると、返ってきたのはこの試合に懸けた強い覚悟だった――。

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続きの内容は

斉藤監督が明かす、中澤選手の「評価された姿勢」とは
中澤選手が語る、幻のHRの裏にあった「秘めた覚悟」
山川穂高が中澤に見せた「先輩としての優しさ」の真意

「(斉藤監督の言葉は)めちゃくちゃうれしいです。『この試合は絶対にやってやろう』という気持ちがめっちゃあったので。本当に一番気合が入りました」

 それだけ強い思いで挑んだ一戦だった。フェニックス・リーグの開幕直前に突然告げられたオイシックスへの派遣。CSや日本シリーズを控えるホークスでは主力選手も調整で出場するため、スタメンの機会は限られる。だからこそ、この派遣を「めちゃくちゃチャンスだと思った」と前向きに受け止めた。

 試合前のノックではソフトバンクベンチから“愛あるヤジ”が飛んだ。「本当に、打席に入る前も集中できないかと思いました。これ大丈夫かなって(笑)。でも、打席に入ってからは集中できてよかったです」と笑顔で振り返った。

斉藤和巳監督が評価する“姿勢”

 派遣期間はフェニックス・リーグが終わる23日まで。斉藤監督も「いろいろな課題と向き合いながらやっているみたい。元々そういうことはしっかりできるタイプなので」と姿勢を評価する。本人も日々課題と向き合っている。

「バッティングに関しては、速い真っすぐをどれだけ打てるかが一番の課題です。守備は二遊間を守らせてもらっていますが、ショートは最近あまりやっていなかったし、セカンドも今年始めたばかり。本当に課題しかないです。チームは違いますけど、やることは変わらないと思って毎日やっています」

 2軍では22試合と出場機会は少なかったが、58打席で打率.327と健闘した。しかしシーズン最終盤には優勝が懸かった試合でベンチから外れる悔しさも味わった。「最後までチームにいるというのが目標だったので、本当に悔しかったです」と唇を噛む。その思いを力に、この日々を成長のチャンスと感じ、気持ちをぶつけている。

オフ前日に山川穂高からの“誘い”

 試合がなかった前日には、山川穂高内野手や佐藤直樹外野手、秋広優人内野手らと動物園でオフを過ごした。その前夜に「行く?」と誘われ、「お願いします!」と即答したという。

 これまであまり接点のなかった先輩との時間も刺激になった。「本当に優しくて、過ごしやすかったです」。そして、試合前に大きな声で中澤へヤジを飛ばしていたのも山川だった。先輩なりの“優しさ”に、喜びを噛み締めていた。

「結果よりも、自分の課題をどれだけ潰せるか。全体的な課題に対して頑張りたいと思います」。慣れ親しんだ同僚たちとの一戦で放った豪快アーチ。残りの日程でも課題を1つずつ潰し、来年の支配下登録へと階段を登ってみせる――。

(森大樹 / Daiki Mori)