プロ野球の世界には、“別れの季節”が必ず訪れる。ソフトバンクは9月30日に又吉克樹投手と、10月1日には武田翔太投手とそれぞれ来季の契約を結ばない旨を伝えたと発表した。さらに7日には田浦文丸投手、長谷川威展投手の支配下2選手、星野恒太朗投手、大城真乃投手、藤田淳平投手、風間球打投手、赤羽蓮投手、水口創太投手、勝連大稀内野手、川原田純平内野手の育成8選手に同様の通告を行った。
プロ野球選手は「個人事業主」と言われ、結果を残せなければ“戦力外”となるシビアな世界で生きている。それでもともに汗を流し、勝利の喜びを分かち合う仲間がいる。「あいつと友達やったって、自慢できるように」――。“残された者”の思いを聞いた。
「やっぱり寂しいなとは思いますけど、こういう世界なので。自分が活躍することで、そういう人たちの(今後の人生において)刺激にもなると思うので。戦力外っていうのは、やっぱり寂しいことですけど、あいつらが自慢できるように。あいつらが(ホークスを)出ていった後も、『あいつと友達やった』って自慢できるように。そういう気持ちで頑張っていかなきゃいけないなと思います」
熱い思いを明かしたのは、入団3年目の木村光投手だった。2022年の育成ドラフト3位で入団した右腕にとって、赤羽と水口は同期、藤田淳は同学年だった。いずれも育成の立場からプロの門をたたき、2桁の背番号を夢見て切磋琢磨してきた盟友だからこそ、感じるものも大きかった。
「やっぱり自分もそうですけど、知っている人が活躍していたら嬉しいので。そう考えると、自分が活躍することによって、何か影響を与えられるんじゃないかなって思うんです」。厳しいプロの世界で戦い抜くのはあくまで自分自身。それでも、志半ばでこの世界を離れざるを得なかった仲間の存在は大きな力となる。
2020年ドラフト1位で入団した井上朋也内野手にとって、今回戦力構想外となった川原田は同期かつ同学年の同志だった。「1年目、2年目のころは、ずっと2軍で一緒だったので。よくご飯にも行ってましたね」。泥だらけのユニホームで白球を追っていた存在だっただけに、「やっぱり寂しいですね」と本音を漏らした。
一方で、口にしたのは自らへの“危機感”だった。「そういう年代になってきたのかなっていうのは、あらためて感じました」。2020年のドラフト組は、支配下5人すべてが高卒だった。その中で川原田は退団が決まり、田上奏大投手は昨オフに育成再契約を結んだ。井上はプロ入り5年目の現在地を冷静に見定めている。
「自分は元々、そういう危機感が強いので。全然、他人事じゃないなって。本当に1年1年を最後のつもりでやらなくちゃいけない。それは変わらないです」
去る者の背中を見つめ、感じるものは十人十色だ。それでも、残された男たちは前に進む“責任”がある。「その時」が来るまで、全力を尽くすことこそが、プロ野球選手の使命だろう。