8日の楽天戦で3打点…“初勝利”をプレゼント
恩師の“初陣”を飾る活躍だった。宮崎県内で行われている秋季教育リーグ「みやざきフェニックス・リーグ」。退団が決まった松山秀明2軍監督に代わり、斉藤和巳3軍監督が指揮を執った8日の楽天戦にチームは6-1で快勝した。そんな一戦で躍動したのがイヒネ・イツア内野手だった。
9番・三里で先発すると、2点リードの6回2死二、三塁で相手投手のボールを中前へ鮮やかにはじき返す2点打をマーク。8回には犠飛を放ち、この日3打点と勝利に大きく貢献した。
今季1軍デビューを果たし、2軍でも打率.259、5本塁打、44打点、30盗塁と大きな飛躍を遂げた21歳。勝負をかける4年の来季に向けて必死にアピールを続けるイヒネだが、口にしたのは強い“渇望”だった。
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続きの内容は
・斉藤監督がイヒネに求める「真の姿」
・今宮からイヒネが得るべき「学び」とは
・イヒネが「期待枠」を卒業した理由
「ただただ物足りないです。1軍でプレーしている人だったら、自分が2軍で残したどの成績よりも高い数字を出すと思うので。全てにおいて、もっと頑張らなくちゃいけないなという感じです」
今宮や山川とプレーも平然「あまり…」
今回のフェニックス・リーグは、CSに向けた調整を兼ねて今宮健太内野手や山川穂高内野手がプレーしている。バリバリの1軍プレーヤーとともにグラウンドに立つイヒネにとっても勉強の日々かと思いきや、「あまり人を見ている余裕もないですね」。ただただ自身のレベルアップに集中している日々だ。
心身ともに成長著しい21歳に対し、斉藤監督はリアルな評価を口にした。「もちろん、以前とは全然変わっているよね。これはもう、誰が見てもそう。ただ、その変化があっても、やっぱりこの世界は結果なので。どういう形でそれを結果に結びつけるか。まだ幼さというか未熟な部分はもちろんあるし、本人もそれは分かってると思うので。その中でどう課題と向き合えるか」。
斉藤監督の言葉から伝わってきたのは、必要以上に温かい目で見ることなく、1人のプレーヤーとしての冷静な評価だった。その事実こそ、イヒネが「期待枠」を卒業し、来季の1軍戦力として競争の“土俵”に上がったことを意味する。
「本当に二遊間を守りたい、ショートを守りたいっていうのであれば、試合の中で内野の中心となれるかどうかということが大事。成長したとはいえ、まだまだ精神的にも技術的にも上がっていかないといけない。この期間は長い間ショートのレギュラーを張っている今宮っていう存在が近くにいる。そういう選手のふとした行動や気配りとか、そういったところを学ぶのが、彼の中で良い方向の変化を生んでくれるかもしれない。この時間を有意義に使ってほしいね」
イヒネはかつて、斉藤監督に対して「ポジティブな方向に持っていってくれる。考え方の面で成長したかなって思います」と感謝を口にしたこともあった。恩師の前でさらに成長した姿を見せることが、何より自分のためにもなる。鍛錬の秋はまだ始まったばかりだ。
(長濱幸治 / Kouji Nagahama)