今季最長の8試合連続スタメン、川瀬が感じる“意図”
「もっともっと存在感を出さないと」。チームが2年連続のパ・リーグ優勝を決めても、川瀬晃内野手の姿勢は変わらなかった。9月30日の日本ハム戦(みずほPayPayドーム)に「7番・二塁」で出場した川瀬は、この最終盤に今季自己最長となる8試合連続でのスタメン出場を果たした。
優勝監督インタビューでは、小久保裕紀監督が川瀬の名前を出して働きを称えた。「ベンチにいると本当に心強いんですけど、最後の方はレギュラーとしても心強く感じました」。指揮官が「ターニングポイント」に挙げた5月2日のロッテ戦(みずほPayPayドーム)。1点を追う9回2死満塁の場面、代打で逆転サヨナラタイムリーを放った活躍は、多くのファンの記憶に刻まれている。
大事な場面での活躍が目立った今シーズンだったが、川瀬は前半戦終了時、自身に厳しい評価を下していた。「手応えは全然ない。自分が監督なら(スタメンでは)使わない」。シーズンも残り2試合となったこの日の試合後、口から出たのはまたしても“反省の弁”だった。「まだまだです」。
優勝が決まり、監督からも評価されている状況であるにもかかわらず、川瀬はなぜ自らに厳しい言葉を投げかけ続けるのか。その背景には、自身のスタメン起用に込められた首脳陣の“ある意図”を感じ取っていたからに他ならない。
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続きの内容は
・首脳陣が川瀬に「試している」真意とは
・長谷川コーチが明かす「成長の秘訣」
・監督が口にした「期待の言葉」の全貌
「優勝が決まっても『まだまだ試されている』という感覚は強くあります。僕がダメなら(今宮)健太さんが復帰して、CS(クライマックスシリーズ)ではそこに入ると思う。だから今はアピールの期間。結果を出さないといけないし、使ってもらっている意味を自分の中で考えながらやらないといけないと感じています」
川瀬が常に感じているのは、「試されている」という首脳陣からの“視線”だった。今宮も「みやざきフェニックス・リーグ」での調整を経て、CSファイナルからチームに合流する予定だ。今年は遊撃のポジションで野村勇内野手が台頭するなど、チームに離脱者が続いた中でも、川瀬の目の前には常に“ライバル”の存在があった。
「これまでずっとそういう気持ちでやってきました。(引退した)川島慶三さん、松田宣浩さん、もちろん今宮さん。そういう存在に追いつけ、追い越せでやってきたからこそ今の僕がある。そういう人たちのおかげで『もっと上手くならないと』と思い続けてこられました」
「試されている試合」と捉えているからこそ、川瀬は結果を出したいと強く望んでいた。CSファイナルで対戦する可能性もある日本ハムを相手に、この日は4打数無安打。「きょうみたいな日本ハムとの試合でこそ、結果を残さないといけない。嫌な印象を相手に与えないといけないっていうのは改めて思います」と悔しさをにじませた。「今は左ピッチャー相手でも使ってもらえている。そういうところで存在感を出さないと」。常に危機感と向き合っている。
長谷川コーチも評価する川瀬の“姿勢”
長谷川勇也R&Dグループスキルコーチ(打撃)は川瀬の姿勢を高く評価する。「悪くなってきたからといって、違うものを取り入れてみたりとかは特にないですし。今の感覚をより高めようと、日々努力している。こちら側から少しヒントを与えるとすぐ自分の感覚に落とし込める選手なので」と語った。
それでも川瀬自身の言葉は厳しい。「アウトになるにしても、もっと意味のある打席を増やさないといけない」。代打なら1打席だが、スタメンなら3~4打席が与えられる。その分、求められる質も高い。「良いときは良いけど、悪いときは悪い。1年間、143試合を通しても自分にはまだ波があると感じます」。真のレギュラーを目指し、試行錯誤を続けている。
改めて優勝監督インタビューでの監督の言葉は「野球人生の財産になった」と振り返る。「ああいう場面で名前が上がるのって本当に少ないと思いますし。調子に乗るとかではないんですけど、こう言ってもらったからにはもっと活躍しないといけない。これを自信にまた自分の名前がいろいろなところで上がるようにっていうのは、すごく思いました」。チームで増し続ける28歳の存在感。次はその打棒でチームを5年ぶりの日本一へ導く。
(森大樹 / Daiki Mori)