遠い1軍、板東湧梧の本音「もうないだろうな」 向き合う現実「野球人生で今が一番…」

板東湧梧【写真:竹村岳】
板東湧梧【写真:竹村岳】

「結局、結果が良くても…」溢れたもどかしい言葉

「結果的に2年続けて1軍で登板できていない状況なので……」。静かな口調ながら、その言葉には押し殺した感情がにじんでいた。

 板東湧梧投手は今季、2軍で主に先発として20試合に登板。ここまでリーグトップの防御率2.43、チーム最多の8勝を記録している。シーズン後半の8月には3試合に登板し、19イニングを投げて失点1(自責0)、防御率0.00と好投を続けていた。

 数字だけを見れば、1軍から声がかかっても何ら不思議はない。しかし2023年9月30日の日本ハム戦以来、約2年間にわたって1軍登板がないのが現状だ。1軍は優勝争いの佳境を迎え、勝負の9連戦の真っ只中。シーズンも終わりが見えてきた今、右腕がありのままの思いを語った。

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続きの内容は

・板東投手が「もうないだろうな」と感じるリアルな壁とは
・2軍で好投しても「上がれない」と本人が語る、1軍で投げるための“明確な基準”
・シーズン最終盤「目の前の試合に全力を尽くす」と語る真意

「現実的に考えたら厳しいというか。『(1軍登板は)もうないだろうな』と思ってしまうので。でももう先は関係なく、ただ自分が今できることをやるしかない。それで色々な偶然が重なって(1軍に)上がれるかもしれないですし」

 2年連続1軍での登板がない現状。「自分の野球人生で、今が一番うまくいっていない。悔しい気持ちが一番強いです」と心境を吐露した。それでも悔しさを力に変え、前を向き黙々と腕を振り続けている。「考えても仕方がない。目の前のことに全力で取り組もうと思っています」。

自らも感じている1軍で投げるための基準

 好投した試合の後ですら、右腕の口からは反省の言葉がこぼれる。それは常に「1軍で戦うための基準」を自身に課しているからに他ならない。

「結局、結果が良くても『大体どれぐらいのレベルになったら(1軍に)上がれる』とか、なんとなくは分かるので。『これでは上がれないだろうな』っていう試合がやっぱり多いです」

 状態が良い時は右バッターにシュート、左バッターにカットボールをきっちり突く制球力が投球の生命線だ。「悪いなりに試合は作れている」と小笠原孝2軍投手コーチ(チーフ)は評価するが、本人の自己分析は厳しい。「球威があるピッチャーなら別だと思うんですけど、自分はきっちりとしたコントロールがなければ抑えられないので」。自らの現在地を冷静に見つめている。

「次に投げるのは(自分にとって)2軍での最終戦だと思うので、まずはその目の前の試合に全力を尽くします」。シーズンが終わる最後の1球まで――。板東湧梧は目の前の1試合だけを見ている。

(森大樹 / Daiki Mori)