育成3年目・佐藤が大切にする“4文字”
昨季は2軍で打率.328を記録するなど、強烈な印象を残した育成3年目の佐藤航太外野手。春季キャンプではA組(1軍)スタートも、胃腸炎により無念の離脱を強いられた。5月中旬以降は打撃の調子も崩し、3、4軍での調整が続いた。
「もう3年目なので、すごく結果が欲しくなってしまって……。結果を求めすぎて色々なことをやってしまい、自分のバッティングを崩してしまいました」
苦しい3か月を越え、8月19日の阪神戦(タマスタ筑後)で2軍合流を果たした。「もう戻ってくるなよ」。合流直前には斉藤和巳3軍監督から温かいゲキを飛ばされ、1時間ほど2人で話をしたという。佐藤航が胸に秘めているのは斉藤監督からの言葉、そして憧れの存在である中村晃内野手から受け取ったメッセージだった。
「(調子が)少し良くなったり悪くなったりしても、やるべきことを継続することを大事にしなさい。本当に上へ行きたいと思っているなら、自分で考えて取り組んで、実行していることを続けていく。それを頑張ってやり続けることが、この先の身になる」。斉藤監督から言われたのは、“やり抜く”ことの重要性だった。その言葉は、佐藤航の意識を根底から揺さぶった。
「今、2軍に合流して状態はそこまで良くないですけど。悪くてもすぐ変えるのではなく、やると決めたことを継続して、自分で決めたことを準備することが大事。すごくそれを大切にしています」。準備に対しても、打席の中でもしっかりと考えながら、段々と細かく意識することができるようになってきている。
中村晃から受け取った1冊の本
憧れの先輩も、同じ道を示してくれていた。今年3月、シーズン開幕前に中村晃内野手が若鷹寮で暮らす選手全員に1冊の本を贈った。長期的な目標に対する情熱と粘り強さを説いた著書「GRIT やり抜く力」。末尾には「みんなの未来が少しでも良いものになりますように」という直筆の手紙が添えられていた。
元々本を読むことが苦手だった佐藤航も、夢中で読み進めた。「『やり抜く力』というのは、本当に自分に足りないものだなと思って。まずは1つ、2つでも、やると決めたことをちゃんとやり抜く。そういうことに対して前向きになれました」。
8月26日の楽天戦(弘前)で1500安打を達成した中村晃は、練習で自身のルーティンを何年も黙々とこなす“練習の鬼”。その姿は、まさに「継続」と「やり抜く力」を体現する存在だ。同じグラウンドに立った際にはその背中を見つめ、「まずは話を聞くよりも自分の目で見て学ぶことが大事だと思って、ずっと観察していました」と振り返る。
立場の違う2人の師が、同じ道を示してくれた。「『お前ならできるだろ』と和巳さんはいつも声をかけてくれます。オフに支配下のチャンスがあるなら、それを絶対ものにしないと駄目」。決意を新たにした21歳は、再び輝きを取り戻すためにグラウンド上でやり抜いてみせる。
(森大樹 / Daiki Mori)