柳町達の守備は何が変わった? 12球団1位の数値を生んだ…首脳陣との“対話”

柳町達【写真:栗木一考】
柳町達【写真:栗木一考】

柳町達の守備指標が飛躍的に向上

 柳町達外野手の活躍が、今季のホークスを力強く支えている。主力の離脱が相次ぐ中で外野の定位置をつかみ、目覚ましい打力を発揮。さらに、今季は打撃だけでなく、守備にも大きな進化が見られる。

 その進化は、データにも表れている。株式会社DELTAのデータによると、平均的な選手と比べてどれだけ失点を防いだかを示す指標「UZR」で、左翼手として12球団2位の「4.7」を記録(400イニング以上)。昨年までの2年間はマイナス1.0前後だった数値が劇的に向上した。

「もし柳町の守備がなかったら……」と思わせる試合は少なくない。それを象徴するように、捕殺数も12球団の外野手でトップの8個を記録し、幾度となく相手走者の生還を阻んでいる。打撃だけでなく守備でもチームに不可欠な存在へと変貌を遂げた28歳。その裏側には、春先からコーチと交わしてきた“対話”があった。

「ステップは多く踏んでいいから、強い球を」

 これが、春季キャンプで大西崇之1軍外野守備走塁兼作戦コーチから伝えられた“指針”だった。これまでは「捕ってから速く」という意識でプレーしてきたが、この意識改革が大きな効果を生んだ。「今年は焦らずにしっかり投げられている要因の一つなのかなと思います」と、柳町本人も手応えを口にする。

 その成果は、12球団トップの捕殺数だけでなく、データにも明確に表れている。昨年まではマイナス数値だった、外野手の送球による貢献度を示す指標「ARM」でも、今季は左翼手として12球団1位となる「2.4」を叩き出している。

 大西コーチとは、「捕球の際に左右どちらの足を前に出すのが自分に合っているのか」を深く話し合ったという。両足を試し、速さよりもステップを意識した送球を繰り返すうちに、「自然と左足が前でも右足が前でも、いい形でステップが踏めるようになっている」と柳町は語る。

 シーズンが開幕すると、捕球から送球までのスピードと正確さが明らかに向上した。「ボールを捕ってからの体のバランスがすごく良くなったよね。強いボールを投げられるようになった」と大西コーチは絶賛する。「スローイングの中で、ボールを離すまでのタイミングを自分の中で一つ掴んだのではないか」と、その変化を分析した。

大西コーチが目の当たりにした“試合の中での進化”

 これまで課題とされてきた守備を磨いたことで、今季は左翼で51試合、右翼で40試合に先発出場。打席数や安打数はすでに自己最多を更新を更新するなど、キャリアで最も長くグラウンドに立っている。大西コーチは柳町のさらなる成長の可能性を口にする。

「試合で打球を多く捕ったことが自信につながった。彼は試合に出る中で上手くなったと思う。もちろん相手打者の打球方向は俺もデータを参考にするけど、打者が打った瞬間に感じる嗅覚は大事。『あ、こっちに来そうだな』という感覚。彼にはその嗅覚がすごくあるんじゃないかな」

 好捕や捕殺といった成功体験の積み重ねが、確かな成長につながっている。「数をこなす中で、打球へのスタートは良くなっていると思います」と、柳町自身も試合で磨かれた感覚を実感している。

寄せる全幅の信頼「すごい助かっている」

 継続して試合に出続けることで、もちろん疲労も蓄積する。それでも「疲れがないと言えば嘘になりますが、それを言い訳にせず、やるべきことをやりたい。守備に就いたら、しっかりとスタートを切る準備をしています」と気を引き締める。攻守にわたる活躍が際立つ今季。柳町達の進化がチームを歓喜へと導く。

(森大樹 / Daiki Mori)