「一番苦しかった」 試合後に回避した“ルーティン”…大関友久が掴んだ11勝目の価値

大関友久【写真:古川剛伊】
大関友久【写真:古川剛伊】

初回いきなり2失点…指揮官「粘ってくれた」

 時刻は午後8時半に迫っていた。この日最後の打者を中飛に打ち取ると、マウンド上の背番号47は心底ほっとした表情を浮かべた。7回を投げ終えて2失点と、結果を見れば上々の投球を披露した大関友久投手。さかのぼること2時間半、この結末を想像するのは難しいほどの状況に左腕は追い込まれていた。

 チーム単独トップ、そして自己最多の11勝目を挙げた19日の西武戦(みずほPayPayドーム)。この日の船出は難航だった。2死後に外崎に四球を与えると、続くネビンにはカーブを捉えられ、右翼テラス席に運ばれた。いきなり2失点を喫すると、続く2回も1死一、三塁を招いた。ここはなんとかしのいだが、苦しい立ち上がりだった。

 一方で3回以降は本来の姿を取り戻し、淡々とアウトを重ねた。小久保監督が「多分、きょうの調子は良くなかったですよね。よく粘ってくれました」と振り返れば、大関本人も「序盤に関しては最近の中で一番苦しかったですね」と認めた。本調子でない中でも、しっかりと白星をつかんだ左腕。その“代償”は、試合後に表れていた。

「今日は疲れてしまったので、試合についてはまた明日話させてくださいって言ってましたね」。大関の様子を語ったのは、バッテリーを組んだ嶺井だった。普段は試合後に必ず2人で行うフィードバックを“回避”するほど、左腕の疲労具合は顕著だったという。

左腕が明かした本音「気付かないところで蓄積する」

 今季途中からコンビを組んでいる嶺井も苦悩のリードを強いられた。「今年の中では一番よくなかったと思います。どの球種も質がいまいちでしたし、なんとかストライクは取れていたという状況で……。正直、何点取られてもおかしくないかなと。本人にも『よくないな』とは伝えていました」。大関とともに現実を見つめ合い、最善策を取っていった結果の11勝だった。

 勝ち星をはじめ、投球回や奪三振数などの数字でキャリアハイを更新し続けている左腕だが、1シーズン投げ続けるのは初めての経験だ。身体に蓄積する疲労はもちろん、メンタルの部分も削り取られるような日々だ。

「やっぱりコンディション面での疲労は必ず気付かないところで蓄積していくものだと思います。身体だけじゃなくて、もちろん心もそう。この時期は1戦1戦の重みが格段に変わってくるし、自分の中でもうまくメリハリをつけながら維持できればいいと思っています」

 今回の投球で10試合連続クオリティスタートを達成したが、これだけ状態の悪い中でも試合を作り、勝ち星を手にした意味は大きい。指揮官も「それはローテーション投手として大事な条件なので。それを見事に果たしてくれたと思います」と称賛した。泣いても笑っても、シーズンは残り1か月ほど。最後まで突っ走って見せる。

(長濱幸治 / Kouji Nagahama)