診断結果に「骨強すぎだろ」 緒方理貢が抱いていた覚悟…「折れてもやる」の真意

頭から一塁ベースへ滑り込んだ緒方理貢【写真:古川剛伊】
頭から一塁ベースへ滑り込んだ緒方理貢【写真:古川剛伊】

15日のロッテ戦でヘッドスライディング…左手親指を負傷

“最悪の事態”が頭をよぎった。15日のロッテ戦(みずほPayPayドーム)、この日出場登録されたばかりの緒方理貢外野手が7回に代打で登場した。遊撃への緩いゴロを放つと、迷うことなく頭から一塁ベースへ滑り込んだ。執念の内野安打をもぎ取ったが、「代償」も大きかった。左手の親指を強く突き、一瞬表情をゆがめた。

 翌16日は試合前の打撃練習に加わらず、ゲームにも出場しなかった。状態が心配されたが、17日の同戦で再び光を放った。0-0の9回、先頭で四球を選んだ近藤健介外野手の代走で出場すると、1死後に二塁へ。牧原大成内野手への初球に思い切りよくスタートすると、際どいタイミングながら三塁を陥れた。直後に牧原大の右前打でサヨナラのホームを踏み、劇的勝利の立役者となった。

 16日の試合前に取材対応した小久保裕紀監督は、緒方について「(骨が)折れていてもやると言っている」と明かしていた。同日の試合前練習が終わった後に病院を受診したという緒方。診察結果を待つリアルな心境と抱いていた覚悟を語ってくれた。

「自分の中では折れているだろうなと覚悟していたので。『折れていないでくれ』とか思うこともなかったですね。逆に『デカい』みたいな。『自分の骨強すぎだろ』っていう感想でしたね」

2軍監督時代から知る指揮官「いい形で出ている」

 事もなげに振り返った26歳。自身の感覚では“骨折”だった。それほどの痛みを感じながらも、監督に伝えた「折れていてもやる」との言葉。それほどの強い気概を見せたかったのか、との問いに全力で否定した。

「本当に折れていてもやるつもりでした。実際に練習して、チームに迷惑をかけるようなプレーしかできないのであれば、自分から(無理ですと)言おうとは思っていたんですけど。自分のやれることはあると思っていたので。本心で『折れていてもやる』と伝えました」

 8月5日に“プロ初”の登録抹消を経験し、小久保監督は「他のコーチから『1軍慣れしている』との声が上がっている」と明かした。そこから最短の10日間で1軍復帰。変わった姿を見せようとした直後のアクシデントだった。残りのシーズンを棒に振る可能性もあっただけに、本人も「ラッキーでした」と胸をなでおろした。

 17日の試合後、指揮官は「本当にプロの仕事をしてくれました」と絶賛。「彼にとっても不本意な2軍だったかもしれないですけど。野球人生をトータルで考えると、その10日間がプラスになるんじゃないかと思って送り出したので。それがいい形で出ていると思います」。2軍監督時代から見てきた愛弟子の確かな変化に目を細める。

「心は折れていなかったです。仮に骨折していたとしても、あのヘッドスライディングを後悔することは絶対にないので」。燃え盛る魂を胸に秘めた26歳が、リーグ連覇へ突き進むチームをさらに勢いづかせる。

(長濱幸治 / Kouji Nagahama)