9日の日本ハム戦で貴重な4号2ラン…本拠地3本目のアーチ
選手は1人で戦っているわけではない。試合前、ドーム内の練習場で消えたLED電灯「1つ分」の差が、大きなホームランを生み出した。9日の日本ハム戦(みずほPayPayドーム)で貴重な4号2ランを放ったジーター・ダウンズ内野手。躍動の裏には、活躍を願う“相棒”の機転が隠されていた。
首位攻防戦の第1ラウンドとなった9日の試合。1点リードの4回無死二塁で、相手左腕の加藤貴から左中間席にアーチをかけた。リードを3点に広げる価値ある一発は、ダウンズ本人にとっても大きな意味を持った。来日2年目の今季は、本拠地で3本塁打を放ちながら、打率.167と苦戦。また、左投手に対しても打率.120と数字上は苦手としている。
「数字を見るとそう見えるのかもしれないですけど、自分としては別に何の意識もしていないです。結果として、そのうち必ず数字が出てくると思うので。大丈夫です」。ダウンズはそう強調したが、ある“悩み”を抱えていた。「何かできることはないか」――。そう考え、策を打ったのは意外な人物だった。
9日の試合前、ダウンズが打撃練習を行っていたドーム内の練習場は普段より心持ち暗かった。「室内にはLED(の電灯)が6列くらいあって、打撃マシンに一番近いところのスイッチを消しましたね」。そう明かしたのは、山田雄大チーフ通訳だ。もちろん、いたずら心が芽生えたわけではない。“ボールを見えづらくする”ことが何よりもの目的だった。
共に戦う仲間へ…「なるべく汚いボールを使って」
「ドームが暗い、試合でボールが見えずらいってダウンズが言うので。何かできることはないかと考えて、ライトを消して、なるべく汚いボールを使って。本人は気付いていない様子ですけどね」
通訳にとって、担当する選手は単なるビジネスパートナーではない。「(ダウンズの)状態もいいですし、もったいないじゃないですか。やっぱり、評価されるのって数字でしかないと思うので。周りから『左ピッチャーが苦手』『本拠地で打ってない』みたいに言われて。でも、ホームラン4本のうち3本はここで打ってるわけじゃないですか。だから『できることは何かあるかな』と考えました」。山田通訳の言葉には、共に戦う仲間への熱い思いが感じられた。
「あれはタカ(山田通訳)がナイス、タカのファインプレーです」。そう語ったのは村上隆行打撃コーチだ。「(9日の)ホームラン自体もよかったんですけど、この球場で打ったという事実が大きいですね」。リーグ連覇に向け、ダウンズの存在が必要不可欠であることに疑いの余地はなく、本拠地でのプレーはこれからも続く。“小さな工夫”が大きな実りをもたらす可能性もある。
「毎日プレーする機会を与えてもらっているので。失敗は次に生かして、うまくいったことは継続する。多くの打席に立たせてもらっているのは、自分の中ではすごく大切なことだと思います」。相棒の力強いサポートを受け、ダウンズはこれからも本拠地を沸かせる。
(長濱幸治 / Kouji Nagahama)