牧原大に感じる「いきいき感」 規定到達は高いハードルも…15年目で感じる“成長”とは

牧原大成【写真:小池義弘】
牧原大成【写真:小池義弘】

現在打席は265…規定到達には毎試合4.05打席が必要

 日々の試合からどのシーンを切り抜き、記事にするかが記者の仕事の1つだ。日本ハムとゲーム差なしの激しい首位争いを繰り広げている中で、ホークスの戦いぶりにも熱が帯びているのを実感する。試合を眺めていると、最近は意識せずとも目で追っている選手がいることにふと気付いた。それは牧原大成内野手だ。

 活躍ぶりは数字にも表れている。8月に入って4試合で21打数10安打の打率.476、1本塁打、8打点とまさに絶好調だ。気になって“ある計算”をしてみた。現在の打席数は265。シーズンの規定打席443まで「178」だ。ホークスの残り試合は44。プロ15年目の牧原大が自身初の規定打席をクリアするためには、ここから毎試合4.05打席が必要となる。数字上は大変高いハードルだと言ってもいい。

 今の牧原大に感じるのは、「いきいき感」だ。邪念を捨て、目の前のプレーに全神経を集中する姿。取材をしていても背番号8から伝わってくる充実感――。それらはどうやって生まれてきているのか。記者の目から深堀してみた。

「今は結果どうこうというよりも、1年間やり続けること。まだ(シーズンは)終わっていないですけど、ここまでやれている時点でもう充実しているというか……。そこは成長かなと。自分の中で大きな収穫だと思っています」

 普段はクールな印象の強い牧原大が、柔らかな表情でそう口にした。自らにとことん厳しい男が口にした「充実」「成長」という言葉。そう語った背景には、これまでのシーズンで成し遂げられなかった大きな目標が近づいてきているからだ。

被弾直後の前田悠に駆け寄り見せた“父性”

 昨季までのプロ14年間で、規定打席をクリアしたことはない。2022年はわずか2打席届かずに涙をのんだ。前述したように、今季も到達への道のりは険しい。しかし、牧原大のモチベーションはそこではない。今季は開幕から1度も登録を抹消されることなく、1軍でプレーを続けている。これまでのキャリアは度重なる故障との戦いで、1度も“完走”したことがないだけに、今は未知の領域で戦う日々だ。

 今季は相次ぐ主力の故障に見舞われたホークス。そんな中で、カバーをし続けてきたのが牧原大だ。「やっぱり今宮さんが抜けて、引っ張っていくのは自分なのかなと思って。より一層、責任感は増えましたね」。試合中も何度となくマウンドに向かい、投手に声をかける姿が目に入ってくる。

 象徴的だったのは6日のロッテ戦(ZOZOマリン)、先発の前田悠伍投手が2回に3ランを打たれた直後のシーンだった。牧原大は20歳のもとに駆け寄り、背中をさすりながら言葉をかけていた。その姿からは一種の“父性”すら感じた。

「(結果として)どう出るかは分からないですけど、結局それをやることでピッチャーがちょっとでも楽になってくれればいいと思いますし。そこですね」。何事もなく振り返るのも牧原大らしい。そんな姿に奈良原浩ヘッドコーチも「本当に存在は大きいですよね。(7月9日のオリックス戦で)死球を受けて、しばらく試合に出られなかった時も『マッキーがいてくれたらな』と何度も思ったので」と信頼を口にする。

「直接『こうしろ、ああしろ』って言うよりも、自分たちや(中村)晃さんもそうですけど、上の人間が全力でプレーすること。それを見て若手がどう思うかっていうところが、これから(ホークスが)本当に強くなっていくかどうかだと思うので」。そう語る背番号8の表情はすがすがしいものだった。誰よりもチームを思う男のプレーに、これからも目を奪われていくのだろう。

(長濱幸治 / Kouji Nagahama)