前半戦89試合で41登板…早くも見えるキャリアハイ
春先の不振を乗り越え、首位・日本ハムと2ゲーム差の2位で折り返したホークス。前半戦の「影のMVP」と呼ぶに相応しい活躍を見せたのが杉山一樹投手だ。7年目の今季はリーグトップの41試合に登板して、2勝2敗10ホールド11セーブ、防御率1.55と、圧倒的な投球を披露。開幕からクローザーを務めたロベルト・オスナ投手の不調に伴い、6月以降は暫定守護神も務めている。
大きなブレークを果たした昨季は、50試合の登板で4勝14ホールド1セーブ、防御率1.61の成績を残したが、その数字すら軽く超えていきそうな状況だ。現在89試合を消化した中で、半分近い試合でマウンドに立ってきた右腕。充実感を抱きながら日々を過ごしているかと思いきや、本人の受け止めは真逆のものだった。「あまり納得はできていないです」――。口にした本心とは。
「点の取られ方が良くないので。取られていい場面では別に失点していいと思っているし、最終的にチームが負けなければいいんですけど、僕自身に2つ負けが付いている。前半戦を終えた時点で首位と2ゲーム差なので。この2敗がなければもしかしたら……っていうのは考えますね」
黒星を喫したのは開幕3戦目の3月30日のロッテ戦と、4月29日の日本ハム戦の2度。そこから3か月ほどにわたって負けがついていないにもかかわらず、その表情は険しかった。杉山が今シーズンの目標に掲げていたのは防御率0点台。高いハードルを設けたのには、もちろん理由があった。
防御率0点台を目標に掲げた理由「一番関係する」
「自分が点を取られなければ負ける確率も少なくなるし、勝つ確率は高くなる。個人としては、防御率がチームの勝敗に一番関係すると思っているので」。あくまで根底にあるのは勝利の2文字。ストイックすぎるほどに1点を見つめてきたからこそ、今季の圧倒的なパフォーマンスがある。
現在、試合を締めくくるマウンドに上がっている右腕。「投げる回が変わっただけで、やることは一緒です」と心構えに変化はないと前置きしつつ、「楽しいは楽しいです」と本音を明かした。その理由も杉山らしさが溢れていた。
「やりがいもあるし、これまでとは全然違いますね。7回、8回で投げることの方が僕の中ではきつかった。やっぱり次のイニングがあるし、そこも考えながら投げなくちゃいけないので。9回は全然、きついとかはないです。楽しい方が大きいかな」
セットアッパーは自身の投球が試合の流れを大きく変える可能性がある。一方でクローザーはリードを守り切れれば試合を終わらせることができる。一般的に心理的負担が大きいと言われる守護神の役目を「楽しい」と言い切れるメンタルこそが杉山の強みだ。
「ここまできたら燃え尽きたいですね。もうボロボロになって、もうへとへとになって。マウンド上で燃え尽きることが本望です」。ペナント争いがさらに激しさを増していく後半戦。これ以上ない覚悟を持った右腕の存在は頼もしい限りだ。
(長濱幸治 / Kouji Nagahama)