周東佑京が語る“怒り”と危機感「チームを弱くする」 グラウンド上でにじむ責任感

周東佑京【写真:栗木一考】
周東佑京【写真:栗木一考】

前半戦終えて打率リーグ4位、盗塁はトップタイ

 選手会長として挑む2シーズン目は、自らとの闘いの日々だ。周東佑京内野手は4月下旬に右腓骨を骨折し、約1か月の戦線離脱を強いられた一方で、前半戦を終えてリーグ4位の打率.302、同トップタイの25盗塁をマーク。キャリアハイを狙える成績を残すなど、チームリーダーとして申し分ない働きを見せている。

 4月を終えて単独最下位と、まさかのスタートを切ったチームだったが、5月以降は本来の姿を取り戻した。交流戦では6年ぶり9度目の優勝を果たすなど、首位日本ハムに2ゲーム差の好位置で後半戦に挑む。大逆襲の立役者であることは間違いない29歳だが、その口から出てきたのは「怒り」だった。

「本当は全試合、全イニング出るっていうのが本当のレギュラーだと思いますし、それができないことにもどかしさというか、イライラすることはもちろんあります。6連戦にフルで出られないっていう状況が、今シーズンの頭からあったので……」

 昨年11月に手術した左ひざの状態を考慮され、今春キャンプは“半リハビリ”の状態で過ごした。シーズンが始まってからも、首脳陣から定期的に「休養日」を与えられながらプレーを続けてきた。そんな中で右足を骨折し、チームを離れざるを得なかった。人一倍責任感の強い選手会長は、それをよしとはしなかった。

奈良原ヘッドコーチが代弁「一番歯がゆいのは本人」

 自らへの怒りを胸に秘めながらも、グラウンドでは決して態度に見せることはなかった。「一番歯がゆいのは本人だと思いますよ、やっぱり。どうにもできない、試合に出たいけど、どうすることもできない。そういう悔しい思いをしているのは本人なので」。周東の思いを代弁したのは奈良原浩ヘッドコーチだ。

「こちらとしては『ちょっとこらえていこうよ』と言ってあげることしかできない。シーズン終盤だったら『頼んだ』となるかもしれないですけど、今はいけるところまで、っていうことになるのかなと。(周東の姿を)見ていて、出たいんだろうなとは思うよね。でも体が言うことを聞かないというジレンマはあるんじゃないかなと思います」

 奈良原ヘッドコーチは選手会長が抱えるもどかしさを受け止めた上で、グラウンドでの姿を称賛する。「スタメンを外れた日は、ベンチで一番声を出しているので。その振る舞いはさすがだと思います」。例え試合に出られなくても、やれることをやる。その姿勢には周東ならではの信念がある。

「苦しくても見せちゃダメでしょ。今までの先輩方がやってきたことを僕もやらないと、下(の世代)がそうなっちゃう。それが一番、チームを弱くするのかなとも思います。勝たないといけないチームだし、若い選手を使っているから負けていますって言い訳もできないですし。今は自分ができることをやるだけです」

 周東佑京が感じるホークスの強さ、そして受け継いでいくべき伝統――。選手会長としての使命は、成績を残すだけではない。チームにとっても、周東自身にとってもさらに過酷な戦いが待ち受けているであろう後半戦。歯を食いしばりながら戦い抜く覚悟は持っている。

(長濱幸治 / Kouji Nagahama)