2か月ぶりの2号2ラン含む2安打も「特にないです」
久々に見る“景色”だった。7月21日の西武戦(ベルーナドーム)、6回1死一塁で低めの直球を捉えた周東佑京内野手の打球は、鋭い弾道のまま右翼スタンドに突き刺さった。リードを4点に広げる2号2ランは、自身2か月ぶりとなるアーチとなった。それと同時に、打率3割に復帰。様々な意味を持つ一打だった。
「特にないです。また明日で2割台に戻るかもしれないし、まだまだ試合数もありますから。そこはあまり考えないようにしています」
試合後、打率3割への思いを聞かれた周東は極めて淡々と言葉を並べた。もちろん、残り試合数を考えれば現時点での打率にさほど意味がないのは間違いない。それでも、周東の“冷めたリアクション”には別の理由もある。凄みさえ感じさせる「諦めの境地」とは――。
「シーズン中、ずっと(打撃が)うまくいくとも思っていなかったですし。まあ『どこかでは3割を切るだろうな』と思いながらやっていたので。僕の場合はあまり現実的じゃないなと……」
周東が語ったのは打率3割への“諦め”だった。字面だけ見れば弱気な発言にも映るが、真意は別にある。「3割を打つなら、近藤(健介)さんとか(柳町)達みたいにフォアボールを取れる打者じゃないと厳しいですよね。達もシーズントータルで70(四球)くらいはいくと思うんですよね」。さらに続けたのは、冷静かつ的確な自己分析だった。
喜びよりも勝った自身への怒り「イライラしていた」
「僕に長打があれば、嫌がってフォアボールもあると思うんですけど。別に長打は多くないので。相手からすれば四球で塁に出すくらいなら、ヒットを打たれてもしょうがないと。3割打者でも7割は凡打なので。それなら相手バッテリーはそっちの選択を取ると思うので。だから、やっぱり3割っていうのは難しい数字だとは思いますね」
シーズン前に掲げた目標は変動する打率ではなく、積み重なっていく安打数だった。そこにも周東らしい価値観が見て取れる。開幕から好調をキープしてきたが、7月に入って3割を割り込むと、一時2割8分台まで落ち込んだ。それでも焦りはなかった。
「結局、苦しくなってくるので。『あー、この打席で打てんやったら3割切るわー』とか。やっぱり3割を切りたくないからヒットを打ちにいって、いらん球に手を出したりとか、打席の中で意識していなくても、そういう打席が結構あったので。そこは割り切って」
20日の試合では右翼席に打球を叩き込み、ダイヤモンドを1周する際にも笑顔が見られなかった。「守りでミスをして、イライラしていたので。取らないといけない打球だったし、僕にエラーがつかなくても投手の自責点になる。それが全てです」。アーチの喜びよりも、5回の中堅守備で打球をはじいてしまったプレーへの怒りが勝っていた。
選手会長として妥協なく勝利を追い求める日々が続く。21日の西武戦が終われば、球宴を挟んで26日から後半戦に突入する。シーズンが終わるまで、変わらず1本1本安打を積み重ねるだけだ。
(長濱幸治 / Kouji Nagahama)