武内から奪った4点目…それ以上の価値があった走塁
ギリギリのタイミングにもかかわらず、迷いなく三塁ベースを回った。バックホームよりも一足早く本塁に滑り込んだ近藤健介外野手の姿に、大西崇之外野守備走塁兼作戦コーチは笑顔で拍手を送った。チームにとって大きな追加点を挙げたワンシーンは、今後への確かな光が差し込んだ瞬間でもあった。
7-3で快勝した20日の西武戦(ベルーナドーム)、3点リードで迎えた3回2死二塁の場面だった。直前に適時二塁打を放った近藤は、山川の左前打で生還。この得点で、難敵の武内から4点目を挙げ、試合の主導権をがっちりと掴んだ。
本来の近藤の走力であれば、三塁を回ったことに何の不思議もないケースだったが、足の不安を抱えながら出場を続けている現状がある。スタメンに復帰した8日以降、際どいタイミングで本塁へ突入したのは今回が初めてだった。1点以上の価値があったことは、近藤本人の表情を見れば明らかだった。
左かかと、右脚違和感…今も抱える不安
「意外と走れましたね。チームとしても武内投手が相手だったので。大きい1点になってよかったかなと思います。ここまで走塁の確認もしていましたし、際どい当たりでも(ホームに)いけるようには準備していたので。そこはよかったなと思います」
試合後、近藤の口調には喜びと安堵が入り交じっていた。今季は開幕直後に腰を手術し、約2か月間も戦列を離れた。1軍復帰後も6月17日の広島戦で走塁中に左かかとを負傷。さらに、右脚の違和感も抱えている状況だ。7月8日にスタメン復帰を果たしたが、今も右翼の守備には付けておらず、手負いの状況で出場を続けている。
だからこそ、20日の試合で全力疾走できたことに意味がある。「試合の強度の中でも、ある程度走れたので。それは大きいかなと思います」。気になる反動については「今は大丈夫です」と足の回復具合に確かな手ごたえを感じている。
コーチが語った見通し「勝負どころでは回します」
三塁コーチャーとして腕を回した大西コーチも試合後はホッとした表情を浮かべた。「今は100%で走れるわけじゃないけど、それでもセーフになる可能性はあると思って回したんだけどね。よく走ってくれましたよ」。感謝を口にしたうえで、こう続けた。
「『だいぶ走れるようになってます』と。『(不安は)ベースの周り際だけ』って(近藤が)言っていたので。スピードに乗ったら走れている。よほど無理するタイミングでは回さないけど、勝負所でいけるかなっていう時は回すと思います」。近藤と日々状態を確認し合っている大西コーチの言葉は、主砲の完全復活が近づいていることの何よりもの証だ。
奈良原浩ヘッドコーチも「あの1点はもちろん大きかったけど、それ以上に近藤があそこまで走れるようになったことに意味がありますね」と笑みを浮かべた。21日の西武戦が球宴前ラストゲームとなり、オールスターブレークを挟んで26日から後半戦が始まる。近藤が本来の姿に戻る日は間もなくだ。
(長濱幸治 / Kouji Nagahama)