何よりも力になった愛妻の言葉
苦しい治療期間を支えてくれたのは、かけがえのない愛妻の存在だった。カーター・スチュワート・ジュニア投手は24日に再来日し、筑後のファーム施設でリハビリを再開している。
今季、開幕ローテーション入りを小久保裕紀監督から期待されていたが、出遅れた。左脇腹の負傷により春季キャンプの途中からリハビリ組に合流し、4月には治療のため一時帰国。静かに、しかし着実に復活への道を歩んできた。
「間違いなく、フラストレーションはありました」。一時帰国中の葛藤と、現在の心境を明かした右腕。そんな苦しい時間を支えてくれたのが、1月に婚約した愛妻との日々だった。
元バレーボール選手のガブリエル・ウッドソンさんと、昨年5月から日本で生活を共にし、今年1月に婚約。同じアスリートとして、常にスチュワートが抱える苦しみや喜びに寄り添ってきた。
「リハビリ中もずっとそばにいてくれて、精神的な支えになりました」。妻から特別な言葉をかけられたわけではないが「『少しずつ』『ステップを踏んで』といった普通の言葉を、いつも通りにかけてくれた」。その何気ない優しさが、何よりも力になった。
オフの日には「外で食事をしたり、一緒に夕日を見に行ったり、本を読んだり……」。当たり前の日常も、婚約したばかりの愛妻と過ごす時間がスチュワートにとってはかけがえのないものだった。
「何気ない時間だけど、自分にとってはとても大切な時間でした」。そして、その積み重ねが心を前向きに変えてくれた。「その結果として、やっぱり気持ち的にもすごくハッピーになりました。ポジティブな気持ちでいられたし、本当に“存在”として助けてもらった」と、感謝の気持ちを込めて語った。
明かした現状「この数年で一番」
米国に一時帰国し、そして再来日。長かったようにも思えるここまでの道のりを振り返ると、スチュワートは穏やかな口調で、確かな自信をにじませた。
「体の状態はとても良いです。この数年の中でも一番ベストな状態で戻ってこられたと思っています」。ここからさらにリハビリを進め、状態を上げていこうとしている。
26日にリハビリ組へ合流し、キャッチボールを再開したばかり。実戦復帰まではまだ時間がかかる見込みで、小久保監督も「今年はおらんもんと思っています。後半に間に合えばそれに越したことはないけど」と話している。森山良二リハビリ担当コーチ(投手)も、「実戦復帰はオールスター明けや8月以降になると思う」と、進捗具合を慎重に見守っている。
チームから離れ、試合で力を発揮できないもどかしさを、スチュワート本人が最も強く感じていた。「正直、苛立ちはありました。やっぱり1人の選手として、試合で投げてなんぼだと思いますし、自分の力で勝利に貢献したいという思いは強くありました」と悔しさをにじませた。
それでも、心が折れることはなかったのは、信じられる仲間の存在があった。
「ホークスというチームをすごく信じていますし、チームメートへの信頼も強く持っています。自分にできることは、体をしっかり整えて、戻ったときにベストなパフォーマンスを発揮すること。それだけです」
再び、マウンドへ――。スチュワートは、その準備を着実に整えていく。
(森大樹 / Daiki Mori)