「1軍厳しい」の評価が一変 長年苦悩し続けた課題…わずか3日で克服できたワケ

OP戦で快投を披露した岩井俊介【写真:冨田成美】
OP戦で快投を披露した岩井俊介【写真:冨田成美】

倉野コーチが絶賛…「大きな期待ができる」

 漂っていた焦燥感が、晴れやかな表情へと変わった。5日に行われたヤクルトとのオープン戦(みずほPayPayドーム)。4回から2番手として登板した岩井俊介投手は、2イニングを投げ無安打無失点3奪三振の快投を披露した。春季キャンプでは状態が上がらず不安を抱えていた右腕も、安堵の表情を浮かべた。

「今日のピッチングは安心して見ていられた。これまではちょっと、1軍で安定して成績を残すのは厳しいかなって投球が続いていた。今日の投球なら大きな期待ができると思いました」と倉野信次1軍投手コーチ(チーフ)兼ヘッドコーディネーター(投手)は岩井の投球を評価した。

 この登板は、飛躍の2年目へ向けて大きなアピールとなった。しかし、2月中は思うような投球ができずにいた。「正直、このままだとやばいなと思っていました」。キャンプ最終日の2日、岩井は状態の悪さを引きずったまま宮崎を後にした。しかし、わずか3日で状態を立て直した。その鍵となったのは、プロ入り後も悩まされ続けた“課題”の解決だった。

「僕のリリースの問題なんですけど、投げ方っていうか……。前までは力みまくっていたんです。でもリリースまでは力感を0にして、リリースの時に100%にする感覚。それを思い出してから良くなったんです」

 修正のヒントは、大学時代の投球フォームにあった。ドラフト指名直後から、無意識のうちに投球時に踏み込んだ左足が一塁側へと開いてしまう癖がついていた。この癖はプロ入り後も消えず、昨シーズン中にも倉野コーチから指摘されていた。左足の開きを意識するあまり、リリースポイントの感覚が狂ってしまっていたのだ。

 実戦登板でもコントロールが安定せず苦しんだ。「キャンプの終わり頃はめっちゃ焦っていました。ちょっとこのままだとやばい……って思っていました。感覚が狂っていたんです」。このままの投球を続けていれば1軍に残ることはできない――。思い悩んだ末、ヒントをくれたのが、大学時代の映像だった。

「足を閉じて投げる時のリリースと、開いている時は感覚があるんですけど、その感覚が合ってきたんです」。5日の試合では、ストレートに勢いが戻り、変化球のキレも格段に向上し、首脳陣を唸らせる投球を見せた。

「キャンプから取り組んできたことが身になってきているというのは感じています。若田部健一投手(ブルペン)コーチとフォームの修正だったり、いろんな取り組みをしているので。ここにきて効果が表れていると僕は感じました」と、倉野コーチも、岩井の努力が実を結び始めていることを認めている。

「枠が少ないので、あとはやるだけです。1試合1試合、全力でアピールします」。岩井が任されるポジションは中ロングの予定だ。津森宥紀投手や、浜口遥大投手らとその枠を争うことになる。苦悩を乗り越え、原点回帰で掴んだ手応え。自信を取り戻した右腕に期待せずにはいられない。

(飯田航平 / Kohei Iida)