「最初から最後まで面白かった」…もっとも盛り上げたのは“帰った男”
毎年恒例。“1996年組”による食事会が、今年も実現した。2月の上旬、集まったのは13人。ピンクのカツラを被った“スペシャルゲスト”も、電話越しに登場した。
メンバーを紹介しよう。選手は7人。栗原陵矢内野手、松本裕樹投手、藤井皓哉投手、上茶谷大河投手、伊藤優輔投手、野村勇内野手、巨人からは泉圭輔投手も来てくれた。加えてチーム運営部の柿木映二さん、古澤勝吾アマスカウト、重田倫明広報、松葉真平1軍アナリスト、塩澤優一3軍アナリスト、堀内汰門さんが参加し、少し規模感のある食事会となった。
まずは、乾杯だ。グラスが揃う。理由もないのに、おのおのが“牽制”し合っていた。誰かいけよ。いやいや、俺はいい。あいつは? え、どうするん。「それが鬱陶しくて僕がやったんですけど、ドン滑りして終わりました」と明かすのが、重田広報だ。「普通に乾杯しただけなんですけどね」と苦笑いするが、そんな光景も想像できてしまう。誰よりも“96年組”を愛する男が、雰囲気を代弁した。
「新入りのカミチャは最初から最後まで面白かったですし、あいつがいたから成り立ったといっても過言ではないですね。伊藤優輔はお酒も入りましたけど、(昨シーズン巨人で同僚だった)泉がいたことでスタートから笑っていてくれました。彼は人見知りだって知っていたので、僕と栗原で『伊藤としゃべろう』『間に入れて話そう』とか企んだり。和気藹々とした感じでした」
同じく宮崎で春季キャンプを行っていた西武・甲斐野央投手はスケジュールの関係で参加できなかった。重田広報も「甲斐野が恋しくなりましたね。いたら、また変わっていたのかなって。ご飯を食べながらも思っていました。あいつの必要性ってめちゃくちゃあるんだと実感しました」としみじみ。途中でテレビ電話をしたといい、画面越しの右腕はピンク色でアフロのカツラを被っていたそうだ。
“初参加”となった伊藤は「お酒も入れば、という感じで。みんなも話をしに来てくれたので、それに乗っかった感じです」と初々しく振り返る。重田広報いわく、なかなかの杯数を飲んでいたという。企てていた通り、栗原との距離感も縮まり「彼もコミュニケーション能力が高くて練習中も声をかけてくれますし、すごくありがたいです。グラウンド上だけだと、くだけた話もできませんし。楽しかったです」と頭を下げていた。
上茶谷は2月14日、球団から「右肘関節クリーニング術」を受けたことが発表された。1996年会に参加した時点でも右肘は思わしい状態ではなかったはず。それでも伊藤が「中心だったのは、福岡に“帰った男”じゃないですか。よくあれだけ盛り上げられるな」と言えば、藤井も「上茶谷の独壇場でしたね。でも、僕も帰る直前まで一緒にいたんですよ。なかなかね、帰るかもしれないという状況で、あそこまでできる選手はいないと思いますよ」と頷いた。
時間が進むにつれて、自然と席替えしていく。周囲から“集中砲火”を浴びた人物がいた。藤井が詳細を明かす。「最後は重田でしたね。ハジけていたというか、みんなにいろいろ言われていました」。流れの中で重田広報は、栗原と上茶谷の間に座ることになった。当然、さばけないほどボケというボケが飛んできた。「『ちょっとクリか、カミチャと話がしたいから、とりあえずあっち行ってくるわ』みたいな。それで間に入って、もう(ツッコミを)返せるとかそんなレベルじゃなかったですね」と藤井。ボケも、パスも“雑”であることが1996年組の真骨頂。最後まで笑顔が絶えなかったのだから、メンバーが変わっても関係性はどこまでも深い。
泉と伊藤は昨シーズン、巨人でチームメートだった。かつてホークスに在籍した右腕は「優輔は1年一緒にプレーしました。シャイなんですけど、めちゃくちゃいいやつなので、移籍して寂しいですね」と笑顔で話す。頻繁にゴルフに行くなど、同学年の球友として仲の良い1人だった。上茶谷とは、自主トレをともにしたこともある。明るい人柄をよく知るからこそ「カミチャに関しては、言うことはありません。そう書いておいてください。僕からコメントすることはありません」と含みたっぷりにエールを送った。
昨年に引き続き、お店を決めたのは柿木さんだった。お店側のサプライズで、プレートを2枚も用意してくれた。同学年の仲間たちが大好きなはずなのに、それぞれが「そんなことないです」と口を揃えて否定する。愛し愛される“1996年組”が、2025年もホークスを支えてほしい。
(竹村岳 / Gaku Takemura)