野球界に新たな風を吹かせる。今シーズンからホークスのR&Dグループスキルコーチ(打撃)に就任した菊池拓斗さんが、球団からの要請を受けた経緯と思いを明かした。就任以前は打撃スキルを自身のアカデミースクールで指導。YouTuberとしての顔も持つ。幅広い層に、独自の理論に基づいた指導を行ってきた。
ホークスからのコーチ就任の打診は、ZOOMでのミーティングだったという。「最初はキャンプの臨時コーチくらいかなと思っていた」と当時を振り返る。しかし、球団側から提示されたのは、常駐コーチとしてのオファー。「スキルコーチ」という新たな役職を設け、その価値を変えていきたいという球団の思いと、菊池コーチ自身の目標が一致した。「スキルコーチを普及させる」という長年の夢を持つ菊池コーチにとって、またとないチャンスだった。
「最初に連絡を受けたのはレッスン中でしたね。近藤健介選手経由で『ソフトバンクの人事の人が拓斗さんに興味を持っているんですけど、連絡先教えて良いですか?』という話をいただいたんです」
菊池コーチ自身、「プロに教えたい」という気持ちはそれほど大きくはなかったという。「一生懸命やっている選手と一緒に野球ができればコーチ冥利に尽きる」。その言葉からは、野球への純粋な愛情が伝わってくる。その思いを感じ取った選手たちは自然とアドバイスを求めにやってくる。
「僕なんかアマチュアですけど関係なく聞きに来てくれる感じがあって、やりやすく感じています。僕のレッスンに通ってる小学生たちは本当にリスペクトできる子たちばかり。なので、プロに教えたいって言う感情ではなくて、僕にやれる事があるんだったら、一生懸命やりますっていう。本当にそれしか感情がないです」。球団のオープンな雰囲気に感謝しつつ、謙虚に語る。
「選手たちは自分の感覚を言語化する時に、いろんなメカニクス的な観点が必要になる。僕の中にはそれがあるので、『それが正しい動作に繋がっているんです』って、うまく摺り合わせができている感じが面白いです」。コーチ業が始まってから1か月。菊池コーチが感じたことはスキルへの理解には、まだまだ伸びしろがあるということだ。
「コーチと選手の間では感覚同士のやり取りしか基本的にしない。その中でこちらから正しい動きのアプローチができる事によって選手も新しい発見をしてくれている部分があるんじゃないかなって思います」
1年目のビジョンについて、「動作解析をもとにしたデータと、自分が今までやってきたスキルとかドリルのつながりを作っていける1年にできたらいいなと思います。その中で選手に落とし込んでいけたらいいなと思ってます」と明かす。科学的なデータと自身の理論やスキルを融合させ、選手たちが新たな発見をできるように、サポートしていくことが目標だ。
YouTuberからプロ野球のコーチへ。異色の経歴を持つ菊池コーチが、ホークスの打撃陣に新しい風を吹き込む。その手腕には大きな期待がかかる。