育成時代は「ほぼなかった」 前田純が支配下キャンプで感じた変化…明確な立場の違い

インタビューに応じた前田純【写真:冨田成美】
インタビューに応じた前田純【写真:冨田成美】

支配下で初キャンプ…前田純が実感した環境の変化

 周りからの視線が明らかに変わった。2桁の背番号を着用して迎える初めての春季キャンプ。熾烈な先発ローテーション争いの真っ只中だが「楽しみしかないですね」。24歳の前田純投手は充実感を滲ませる。

 日本文理大から2022年育成ドラフト10位でホークス入り。ドラフト会議では自らの前に121人の名前が読み上げられた。育成5巡目時点でホークスと巨人を除く10球団が指名を終了。「頼むから引っかかってくれ」。祈り続けた当時の気持ちは今でも覚えている。

 あれから3年が経過。「順調に階段を登っている状態です」と話すように、2月26日の韓国・ロッテとの練習試合で2回2安打無失点の好投を披露した。育成時代との環境の“変化”が左腕を支えている。

「応援してくれる人は増えましたね。『マエジュン、練習頑張って!』とか、声をかけてくださるようになりました。育成の時はほぼなかったので。それが結構増えて、励みになっていますね」

 昨年7月に支配下登録。9月29日の敵地・日本ハム戦では6回3安打無失点で1軍デビューを白星で飾った。2軍では10勝を挙げてウエスタン・リーグの最多勝に輝くと、春季キャンプはA組に選出。「理想のステップを踏んでいますね」とうなずく。

 入団当初は3、4軍からのスタートだったが、育成の立場でも「不安はなかった」と振り返る。「課題が明確になってからは、やるべきことをやっていけば上手くなるなという感じになったので」。3軍、2軍と着実にステップアップしていった。

 育成10位で1軍で勝利投手になったのは前田純ただ一人。下位指名から下剋上を果たしたが「チャンスはもらえていた方」と話す。要因は体の丈夫さ。「怪我してなかったっていうのは結構大きいと思います」。

 沖縄・中部商高時代はベンチ入りすらなかった。日本文理大時代も下級生時代は怪我に苦しんでいたが、「3年生ぐらいの時に『怪我とかしてたら、使ってもらえんぞ』ってコーチに言われて。そこからはケアとかもしっかりするようになりました」。以降は全く怪我もなく、成績も伸ばしていった。

 先発として飛躍がかかる中、チームは上沢直之投手、浜口遥大投手、伊藤優輔投手ら先発を補強。争いは熾烈になったが「自分の結果次第だと思うんで、そこはもう考えずに。逆に考えないようにしてました」。自信があるからこそ他人を気にせず、自らのプレーに集中できている。

(川村虎大 / Kodai Kawamura)