前日にあたる18日の夜には、外野手とコーチ陣が集まり、みんなで野球談議に花を咲かせた。ベテラン勢と食事をすることすら、支配下登録を目指す育成選手にとっては貴重な機会だ。親睦を深めながら、全員で盛り上がった後に行われたのが、ゴルフの組み合わせを決めるためのクジ引きだ。
「引いたクジに番号が書かれてあって、『何番の人』って言われたら4人が一気に手を上げることになったんです。僕は若手の卓にいたんですけど、パって上げたら、誰も上げていなくて。振り返ったら、後ろで近藤さんと柳田さんが手を挙げていたんです」
周囲も声を出して驚いた。くじ引きの結果、柳田&近藤という球界屈指のスーパースターと同じ組になったのが、育成3年目の重松凱人外野手だ。「すごいところに入ったなと思いましたよ。震えました(笑)」と話すが、すぐに自分が“大当たり”のクジを引いたことに気がついた。
「最初は『うわっ!』って思ったんですけど、そんな機会ないじゃないですか。だからすごく特別感があって、すぐに『よっしゃ!』と思えました。周りのみんなからは『お前すごいな』って言われたんですけど、僕はラッキーだと思いました。行きたくても行けないし、行きましょうとも言えないので、ラッキーだなって」
緊張と興奮が入り混じる中、2人は重松を温かく迎え入れた。「すごく優しくて。僕はあまりゴルフの経験もないし、上手でもないんですけど、途中で教えていただいたりしました。先輩って先に行っちゃうイメージがあったんですけど、待っていてくれたりとか、カートも全部運転してくれたり。すごくやりやすかったんです」と、夢のような時間を振り返る。憧れの存在とのラウンドは、忘れられない思い出になった。
福岡出身の重松にとって、ホークスのベテラン選手らの存在は特別だ。テレビに映っていた人と同じユニホームを着ることになり、不思議な気持ちは今も抱いている。「地元なので、特に柳田さんとかはずっと試合にも出られていました。今のコーチ陣もすごいですよ。城所(龍磨)コーチや明石(健志)コーチは現役の時に見ていた方なので、教えてもらっていることも変な感じです」。
昨シーズンは3軍で過ごす時間がほとんどだった。神主打法と呼ばれる特徴的な打撃フォームだったが、試行錯誤を繰り返し、大幅にフォームを改造した。「あの形じゃダメって思っていたんですけど、シーズン途中で変える勇気がなかったんです。秋のキャンプでも、みっちりできたので、ウインターリーグで試したいという気持ちがあった」と、自身の課題と真摯に向き合ってきた。ウインターリーグでは46打数12安打、打率.261。本塁打も放つなど手応えを感じる期間になった。
今年のキャンプは2軍にあたるB組からのスタート。支配下登録を勝ち取るための、大事な年だ。「やっと勝負できる場に来たなと思っています。3軍にいても支配下にはなれないので。2軍で結果を残して、1軍で必要とされないと、(2桁は)見えてこないので」。憧れの先輩たちとの“まさかの幸運”に恵まれたことで、同じ舞台に立つ意欲がさらに強くなった。支配下登録という目標に向かって、ひたむきに、そして力強く歩みを進めていく。