長谷川勇也と明石健志…「スキルコーチ」の力を借りて見つけた2つのポイント
リニューアルした「鷹フルリレーインタビュー」。今回は、中村晃選手の登場です。テーマは「技術とスタイル」。近年は、自分自身に対しての自信を見失いかけていたといいます。2つのポイントにフォーカスして、取り戻そうとしているものに迫りました。「ここから自分がどんなふうにプロ野球生活を送っていくのか、楽しみです」。芽生えつつある新しい感情を、赤裸々に語ります。
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オープン戦も始まり、春季キャンプも手締めを迎えた。打撃において「今年バージョンのものを探したい」と話していた中村は「まだ実戦はやっていないんですけど、これで行こうかなというのは固まっています」という。S組での調整が15日まで続いた中、明石健志、長谷川勇也R&Dグループスキルコーチ(打撃)らの力も借りながら「いろんなことを聞きながら、新しいこともやっています。数も振って、自分の中でこれというものを探すのがキャンプ。それはしっかりできました」と充実感をにじませた。
1月31日、小久保裕紀監督は春季キャンプのテーマを掲げた。「愉しむ」「出し切る」「追い求める」の3つだ。「心技体、全てにおいて自分の究極を追い求める。思うような成績が残らない時に、プロなら『よし、練習しよう』『技術が足りないからだ』と割り切ることができれば、活路を見出せるんじゃないか」と訓示した。昨オフから何度も「技術」という言葉を繰り返してきた中村にとっても、重なる部分があった。
新設されたR&Dグループスキルコーチ(打撃)とのやり取り。動作解析を用いながら「そのフィードバックをしてもらって、自分に必要な練習方法を出してもらうんです」と自分にしかない方向性をともに模索してきた。「若い選手だと打球はスイングのスピードをあげていく作業になると思うんですけど、僕はいかに芯に当てるか。タイミングを取ること、確率良くミートすること、その2つですかね」。通算1427安打を誇る。近年は自分に対しても迷いを感じていたから、今は“その2つ”を心から信じている。
「やっぱり野球そのものが変わっていく。長打が重要視されてきている。自分のやってきたことを変えていかないといけないとも思っていましたし、チャレンジもしました。自分本来じゃない姿で勝負をしていたので、やっぱり自信がなかったんだろうなって思います。でもそこじゃないのか、と。自分は自分のスタイルで、やってきたことを出していけばいい」
昨年12月の契約更改で「自信を持っていない感じがあった」と明かしていた。改めて口にしたのは、その真意だ。長打が重視され、進化する野球に対応しようとした。積み重ねてきた経験値と勝負強さについても「それも再現できる確率が高くないと生まれない。結局は技術です」と言い切った。中村ほどのプレーヤーでも、挑戦と失敗を繰り返して今がある。
「その中で長打を求めていた時期もありました。色々経験して今に至るので、自信がなかった時も今となっては勉強になっています。後悔はないです。常に変化、成長はしたいと思っていますから」
2014年には最多安打を獲得。長打というよりは、最大の持ち味であるバットコントロールにもう1度フォーカスする。「10年くらい前はね、打率とかがどうしても評価の対象になる。その時は打率を残す、ヒットを打つことには自信がありました。今はどうしても長打とか出塁率、指標がすごくあるじゃないですか。僕みたいな選手が評価されない時代になってきている。難しかったと思いますけど、そこもまた勉強です」。紆余曲折を経て見つけた自分のスタイルと技術を、もう絶対に疑わない。
小久保監督も明言しているように、昨年と同様、主に代打としての役割が期待される。1打席にかける集中力や切り替え、メンタル面も重要になるポジションだ。中村も「気持ちも含めて、全て技術だと思います」と表現する。1試合でたった1回しかないチャンス。結果を出すのは簡単なことではない。寡黙な打撃職人は、自らの“プロ意識”に問いかけた。
「難しいと思われることをやる、難しいことをするのが自分の新しいチャレンジでもあるし、それがプロだと思います。ここから自分がどんなふうにプロ野球生活を送っていくのか、楽しみですし。今シーズンは代打という仕事にチャレンジしていきたいと思っています」
成長のチャンスを掴むには練習しかない。「量をやればやるほど、そのきっかけにも出会うことは多いと思うので。大事なのは練習だと思いますよ」。プロ18年目となる2025年。重圧のかかる左打席で、自分の技術を証明する。
(竹村岳 / Gaku Takemura)