“大陸バッテリー”復活のカギはメンタル強化 渡邉陸が見る「一瞬のかけひきと戦術」

インタビューに応じた渡邉陸【写真:冨田成美】
インタビューに応じた渡邉陸【写真:冨田成美】

成長の鍵握るメンタル強化…国技から得るヒント「改めていいなって」

 今年からリニューアルした「鷹フルリレーインタビュー」。テキスト方式で、選手それぞれの今季にかける思いを紐解いていきます。今回は渡邉陸選手の登場です。「自分にはできないから好き」と、他競技のスポーツから学んだり、新しいものを取り入れようとする姿勢がありました。3年ぶりに叶えたい先輩とのバッテリーへの思いも……。

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 何事も野球につなげたい気持ちが垣間見える。7年目を迎える渡邉陸は、正捕手の座をかけた争いの真っ只中にいる。その中でも、大関友久投手との“大陸バッテリー”を今季は多くの試合で組んでいきたいと意気込む。左腕とのバッテリーは昨年も実現することはなかったが、その思いが静かに燃え上がっていることには理由がある。

「野球の話はもちろんしますけど、最近はメンタルの話が多いです。普段のメンタルの状況とかを話したりしますね。ゼキ(大関)さんは結構、『おれはこうなんだけど、陸はどう思う?』みたいな話が多いんですよ。『なんでそれをしてるの?』とか」

 夕食を共にすれば、自然と話が弾む。気付けば1時間話し込むことも。渡邉陸の“根幹”にあるものを探るような質問も少なくないという。配球についても意見を交わし、互いの考えを理解し合える、そんな関係だ。そんな渡邉陸が自身の成長を信じて参考にするものがある。“一瞬のかけひき”と“戦術”から得るものに迫った――。

「小さい頃、ひいおばあちゃんの家に行った時に相撲を見ていたんです。最近も見るようになったんですけど、そのきっかけはジェシー(日本ハムの水谷瞬外野手)ですね。水谷がめっちゃ好きなんですよ。僕も好きで見ていたんで、話が通じていました。去年は九州場所の後に相撲部屋の千秋楽パーティーに行かせてもらって、改めていいなって思いました」

 幼い頃から見ていた大相撲。一瞬の駆け引きに魅了される。

「野球と一緒で、毎場所対戦する人がいるじゃないですか。例えば春場所で組まれて負けたら、次の場所では負けた方が突っ張って来たりとか。過去の対戦も踏まえての戦いとかもあるんで面白いんです」。過去のデータや相手打者の傾向なども常に頭に入れ、最適なボールを投手に要求するのは捕手も同じ。一瞬の判断が必要なポジションだからこそ、野球にも通じる奥深さがあると感じている。

 サッカーを見ることも好きだという。「完全な戦術じゃないですか。チームみんなが戦術で動いて。ザ・チームスポーツな感じが良いんですよね」。洗練されたチーム全体の戦術は見ているだけで楽しくなる。1対1の相撲とは対照的なチームスポーツではあるが、勝負の最前線に立ち、試合を作る立場からすれば関心が湧くのも当然だろう。

「ゼキ(大関)さんは陶芸に行ってたじゃないですか。そういう話だったり、目標と目的の違いの話とかもしましたね」

大関友久(左)と渡邉陸【写真:竹村岳】
大関友久(左)と渡邉陸【写真:竹村岳】

 大関もスポーツ心理学を学び、オフには野球以外に使う時間も大切にしてきた。それが野球のパフォーマンスの向上につながるからだ。様々な分野から刺激を受けることで、視野が広がり、思考が深まることが結果へとつながっていくと信じている。その考えを渡邉陸も取り入れることで、新しい習慣も身についてきた。

「読書は基本、本で読みますね。携帯で読むことはたまにです。『打撃の真髄』っていう本があるんですけど、今回持って来たのはそれとメンタル系が2つですね。キャンプ中に王(貞治)会長に頂いた本を読んでいますね」

 あの頃よりも成長した姿を見てほしい――。そして何よりも正捕手を掴み取るために。自主トレをともにした中村晃外野手など、自身を成長させてくれる存在が周りには多くいる。“大陸バッテリー”の再開を信じて、これからもひたむきに努力を重ねていく。

(飯田航平 / Kohei Iida)