今回の取材が佐藤直とは初対面だった。名刺を渡し、挨拶すると「重松です」と名乗ってきた。真剣な表情をされ一瞬、聞き間違えかとさえ思ったが、すぐさま広報がツッコミ。陽気な26歳は意外にも「人前でなんかやるのは苦手」と話す。
同期の大津が「なんでそんなに面白いのって思っています」と語るように明るい性格。取材中も時折“ボケ”を交え、場を明るくする。以前に行われていた声出しでは、チームメートを何度も笑わせてきたが「結構考えています。だいぶ考えています。全て滑りたくはないので」と“下準備”を欠かさない。
そんな性格の佐藤直だが、野球の話になると真剣な表情になる。昨オフに戦力外通告を受け、育成で再契約。1年前は背番号3桁でキャンプを過ごし、6月に支配下復帰した。オフの契約更改では「これ以上の地獄はないくらい」と厳しい言葉で振り返っていた。
かつては1度悩むと負のサイクルから抜け出すことができなかった。「少し“あかん”かったら、だんだん自分で“あかん”ふうにに考えてしまって、ほんまに“あかん”くなって」。塞ぎ込んで悩む日々だったが、柳田と自主トレをともにして少しずつ心の持ち方に変化がみられた。
「野球もすごいですけど人間性もすごいなって。全部が完璧」。普段から明るい柳田を見て心の持ちようも変わった。「まだ完全に治ってない」と今でも課題であることには変わりはないが「少しはポジティブになれるようになった」と前を向く。
今季は支配下登録選手として2桁の背番号でキャンプを迎えた。B組(2軍)に配置されたが、自主トレで強化した下半身に変化も表れる。「打球がちょっと飛ぶようになったかなって。やってきたことはあっているかなって思います」と納得の表情を浮かべる。
目指すは“チーム柳田”の後輩、笹川吉康外野手とともに1軍定着だ。「1軍でプレーすることが柳田さんにとっての恩返しでもあると思うんで。厳しい戦いになると思いますけど。2人とも活躍できれば」。静かな闘志を燃やした。