決起集会で「深い話」…後輩の成長を絶賛 西田広報、後輩の育て方「俺に相談するな」

西田哲朗広報(左)と重田倫明広報【写真:竹村岳】
西田哲朗広報(左)と重田倫明広報【写真:竹村岳】

1月30日に宮崎入り…仕事を終わらせた2人は「“プチ決起集会”、するか」

 振り返ってみても“最大の収穫”だった。決して褒めて伸ばすようなタイプではない。それでも、確かな成長を感じ取っていた。2025年の春季キャンプが始まり、チームとしての活動が本格的にスタートした。“球春”を迎える少し前。西田哲朗広報と重田倫明広報は1月30日、焼き鳥を食べながら2人だけで決起集会を開いた。

 西田広報は2018年からトレードでホークスに加入。2020年を最後に現役を引退し、広報に転身した。今季が5年目で「自分も日本一に少しでも貢献できるように」と意気込みを語る。重田広報も5年間の現役生活を終えて、今季が裏方さんとして2年目だ。チームがキャンプ地・宮崎に移動したのは1月31日だったが、2人は設営や球場設備の確認など、目的を持って“前入り”していた。食事をしたのは、その日の夜だ。「“プチ決起集会”、するか」。

 西田広報はシーズンのほとんどを1軍で過ごしているが、重田広報の管轄はファーム。同じ部署で仕事をしていても、昨シーズンまで2人の接点はほとんどなく、一緒に食事をしたこともなかった。西田広報が明かしたのは、昨年12月の出来事。球団とゆっくり話をする機会があった。2024年、最大の思い出は当然「リーグ優勝」。その上で、球団から「よかったことはありましたか」と問われた。伝えたのが、後輩の成長だった。

「重田が1年でこれだけ成長できるんや、と思いました。僕は優勝して広報業務ができたことはもちろんですけど、重田が成長したということは言いました。自分ができるアドバイスもしていって、1年が経ってより深い話ができた時に、すごく嬉しさを覚えました。僕もまだまだなんですけどね」

 昨年11月の秋季キャンプ。西田広報と重田広報は、宮崎でともに仕事をしていた。「その時に初めて一緒に食事をしましたね」。後輩にとっては、1年目のシーズンを終えたばかり。「これまでも、僕から言われたことがあるわけじゃないですか。『その時はわからなかったですけど、1年が経ってやっとわかりました』みたいな、深い話もできました」。考えが変わった姿を目の当たりにして、後輩に伝え続けてきたことが間違いじゃなかったと感じられた。

 秋季キャンプだから、参加している選手は若手だけ。西田広報から、こんなやり取りをしたという。

「秋の時は、僕から重田に『自分が思うようにやっていったらいいよ』って話をしましたね。『俺に相談するなよ、しなくていいよ』って。自分が思うように、まずはやってみることですよね。(重田案件の)メールとかも、ちゃんと僕は見ているので。本当に迷った時だけ相談してきてほしかったんです。それはやっぱり、自分で『この選手を露出していきたい』っていう感性を養っていかないといけないですから」

 大津亮介投手や大関友久投手、前田悠伍投手らが宮崎にいた。まだまだ魅力をファンに知ってもらいたい若手ばかりだからこそ、重田広報に任せ、自身はサポートに回った。「僕もいろんな経験をして、同じ失敗をしないように学んできた。一通りは教えて、任せるというのはやっていきたいですよね」と、順序を踏みつつノウハウを叩き込んできた。

 重田広報がスタッフに転身したのが2024年1月。西田広報から常に伝えてきたのが、“見られ方”を意識すべきということだった。「僕らの仕事は、信頼が大事。『1つの行動をみんなが見ていると意識しなさい』と言いました」。全ては、選手とチームのため。裏方さんとしての矜持は、細部に宿っているという。

「すごく些細なことですよ。キャンプ中でも、通路で僕たちが歩きながら歯磨きをしていたら、どう思いますか? 見栄えが良くないですよね。広報チームが群れて、固まって仕事をするのも、同じです。何かを思う人がいると、僕は思います。そういう見え方を大事にしていこうという話をしてきました。いいことを10個しても、悪いことを1個したら、そっちが勝ってしまいますからね」

 日本シリーズで敗れ、終戦した2024年。悔しさを抱いたのは、裏方さんも同じだ。球団スタッフに転身して5年目で「チーフ」の肩書きを背負うことになった西田広報は「後輩のミスは僕のミスになるし、マスコミの皆さんといい関係性を作るためには、厳しく言っていかないといけないんですけど。新しく入ったクワ(鍬原拓也広報)とも『最強の広報チームを作っていこう』って話はしています」と熱く語る。頼もしい後輩と一緒に、今年こそ頂点を目指す。

(竹村岳 / Gaku Takemura)