益田はプロ13年で通算747試合に登板し、243セーブを誇るロッテの守護神。数字が物語るように、その練習は想像を絶するものだった。「ガチで帰ろう」。初日の練習を終え、2人が発した言葉は“後悔”だった。
「自主トレ1日目が終わって『よし帰ろうか』って。しんどすぎて、ガチトーンで話しましたよ。津森さんとベランダで『マジで終わらん? マジで自主トレ場所ミスったな』って」
まず突きつけられたのは過酷な練習メニューだった。基礎体力の強化を目的としたランニングは、毎日10キロ以上。走り続ける日々が始まった。岩井は「ランが怖すぎて、1日の始まりが憂鬱だった」と振り返るほど。初日の練習を終えて、共同生活を行う一軒家に戻った2人。これから続くトレーニングを思うと、恐怖を覚えるほどだった。離島だから当然、逃げ場はない。
「ランニングはもちろん、体幹メニューもすごかったですね。毎日、30種目くらいを1日でやるんです。ランの前に20種目、キャッチボール前に10種目やったんですけど、すごくキツかったです。ランはポール間走だったら20往復とか。本当に1日10キロくらい走っていましたね」
2日目以降も変わらない練習メニューを消化してきた。「永遠に続くかと思った」。岩井がそう口にするほど、終わりが見えないメニューだったが「徐々に体がバグってきて。本数の感覚がおかしくなるんです。ポール間走10本でも『少ないな』みたいな感じで、もう普通みたいになっちゃいましたね。アップみたいな感覚でした。キツかったけど、やらされるトレーニングって大事なんで。1人じゃ多分、追い込めていなかったと思うので。行って良かったです」。岩井が口にしたのは心身の成長だった。
共同生活の中で絆も深まった。練習だけでなく、食事や洗濯など、生活面でも苦楽を共にしたことで、2人の関係は強固なものになった。その一方で、共同生活ならではの苦労と、新たな気づきもあった。
「水回りを毎日掃除しても、毎日汚れるから『もういいや』と思いました」。そう苦笑したのは津森。岩井は「洗濯物もみんなで回していたんですけど、乾燥が終わった服がたたまれているんですよ。ピシッと。全部、津森さんです。津森さんが綺麗好きだとは知っていたんですけど、そこまでやるとは思ってなかったです」と証言。先輩右腕の意外な一面を知ることになった。
「1年通して勝ちパターンで投げたいです。投げられるのであれば50試合でも60試合でも。それだけチームに必要とされている証なので。投げられるだけ投げたい」と津森が語れば、2年目の岩井は「目標は50試合です」と力強く宣言した。中継ぎとしての期待がかかる右腕同士。“鬼トレ”で鍛えた心と体で、投手陣を支えていく。