2010年ドラフト2位で入団した柳田と、同年育成ドラフト6位で入団した甲斐。学年は4つ違うが、ともに「常勝ホークス」を築いてきた“戦友”だ。札幌に遠征へ行った際には、「寿司会」と称して馴染みの店に足しげく通うなど、グラウンドの外でもかけがえのない存在となっていた。だからこそ、柳田は巨人へのFA移籍を決めた甲斐への思いを飾ることなく語った。
「寂しかったです。『うわー、寂しいな』っていう。そういう話もしましたけど、それでも本人が決めたことなんで。環境は変わって大変だと思うんですけど、拓也らしく頑張ってほしいなと思います」
移籍が発表された前日に連絡があった。「お世話になりました。巨人に行きます」。決断するまでの期間、甲斐の揺れる胸中を感じ取っていた。「何回か話しましたけど、どうしようかみたいな感じでしたけどね。悩んでた感じでした」。もちろん今後も一緒にプレーしたい――。その本音を口にすることはなく、じっと見守ってきた。甲斐の思いを尊重したのは、同期としてともに歩んできた14年間を知っているからだ。
「育成で入ってね。レギュラーになって、日本代表になって。本当にここまでの立ち位置を掴むために、すごく頑張ったんだなと。素晴らしい選手だなっていうのを感じますし、陰ですごい努力をしたと思うので。なかなかそういう選手はいないと思うので、尊敬してます」
柳田には忘れられないシーンがある。「ロッカーで顔にタオルをかけて……。もうくたびれて『はぁ』みたいな溜め息をずっとついていて。大変そうやなって。しんどいやろうなっていうのは、すごく見ましたね」。甲斐が日々、限界まで苦しみながら戦っていた証だった。
「もうずっとですよ。試合に負けた時が多かったと思うんですけど。チーム状態が良くない時とかは大変そうな感じだったんで。そこはキャッチャーにしかわからないというか、僕にはわかんなかったんですけど。相当つらい思いとか、色々あったと思うので。そこはちょっとかわいそうやなと思いました」
チームの勝敗を一身に背負う甲斐を少しでも助けるべく、柳田も主砲としてバットを振り続けてきた。「みんながどれだけミスしようが、ピッチャーが打たれようが、勝てば本当にみんなが救われるというか。そういうのはあるので。試合に勝つことが一番大事だと思い続けてやってきましたね」。少しでも正捕手の肩の荷を下ろしたかった。
今シーズンからは別々のリーグで戦う。「日本シリーズで戦えたら最高っすね」。14年間をともに戦い、喜びも悔しさも味わった“戦友”。最高の舞台での再会を心から望んでいる。