育成の“先輩”牧原大成は若鷹に「自覚持ってやらないと終わってしまう」
自分自身も、かつては3桁を背負っていた。“世界のスピードスター”になった今、育成選手の姿はどう見えているのか。
周東佑京内野手は、昨年11月に左膝を手術した。2024年は41盗塁で2年連続3度目のタイトルを獲得したが、痛みとともに駆け抜けたシーズンでもあった。年が明け、今月9日に都内で検査を受け「『ちょっと早いけどいいんじゃないか』って。『スポーツ選手ですから、大丈夫でしょう』と言ってもらいました」と、着実に段階を踏んだ。練習できるメニューの強度も、少しずつ上がってきているところだ。
選手会長に就任した2024年。オフシーズンも球団行事に参加しながら、リハビリ組での調整を継続していた。ファーム施設「HAWKS ベースボールパーク筑後」に通う日々。後輩たちと過ごす時間も、自然と増えた。自身も2017年育成ドラフト2位でプロ入り。かつては121番を背負い、支配下選手登録を目指していた1人だ。
2023年12月、同じく育成出身の牧原大成内野手は「もうちょっと自覚持ってやらないと終わってしまうよ」と、後輩たちに苦言を呈していた。1年が過ぎても、その印象は「変わっていない」と言い切っていた背番号8。選手会長という立場からチームの先頭に立ち、リーダーとして経験を積んだ周東の目には、どのように映っているのか。
「別に、僕の人生じゃないので。その選手がやろうがやるまいが、僕には関係ないですから。あまり何も思わないです。マキさんはすごく優しいなって思います。言ってあげるじゃないですか。今回も(自主トレに)連れて行ったりしていますし。千賀(滉大)さんもそうですけど、すごくみんな優しいなって思います」
牧原大は今オフの自主トレに4人の育成選手を連れ、鍛錬を積んでいる。沖縄・宮古島では千賀滉大投手がメジャー3年目のシーズンに向けて備えており、今季から育成契約となった田上奏大投手らが参加している。ポジションを争うはずの後輩に対し、面倒を見ることは先輩として「優しい」――。周東は率直な印象を口にした。
今の若鷹が「練習をしなさすぎる」という話を、牧原大は山川穂高内野手としたことがあると明かしていた。主砲は「僕は『しなくていい』と思っているんですよ。だって、しなかったら僕が絶対に勝ちますもん。だからマッキーは優しいんですよ」と独特の表現で語っていた。プロ野球選手なら、自分のポジションは自分で守り、奪わなければならない。周東も「誰も出てこなかったら僕のポジションはずっとあるわけなので。だから別に(厳しいことは)言う必要がない」と同調した。
左膝のリハビリということもあり、練習できることも限られていた。それだけに「僕も室内でウエートしかしていないから、あまり外に出てやることはなかったです」と振り返る。育成選手との接点があったわけではないが、今の若鷹たちを見て、感心させられる出来事もあった。
「ウエートはすごいなって思います。去年、僕がリハビリにきたとき、ルーキーの子や、3軍、4軍でやっている子も、ウエートトレーニングの時間が多いって聞いていたから。その分、体がすごくいいなっていうのは思います」
2023年3月に行われたワールド・ベースボール・クラシック(WBC)を終えた時、周東は「野球はフィジカルだと、パワーだなと思いました」と語っていた。怪我をしないことを含め、トレーニングの重要性は身を持って感じたつもりだ。だからこそ、後輩たちを素直に「すごい」と思った。自身のルーキーイヤーは、「技術練習が多かったから。疲れてウエートできないとかありました」。それに比べて、「今は高卒の子でもトレーニングメインでやらせてもらっているから。それはいいんじゃないかなと思います」と印象を明かした。
3か月間のリハビリも、少しずつ終わりが見えてきた。重点を置いたのはやはりトレーニングだといい「大きくなろうとは思っていないですけど、ある程度の強さは必要なので。(2021年9月に手術した)右肩のこともあるし、負担がこないように。上半身をメインにやってきました。下半身(のトレーニング)ができるようになってからも、そんなに頻度をこなせるわけじゃないから、様子を見ながら」という。自身が今身につけている知識に、若鷹たちはもっと早く気付けているのだから、成長のきっかけは数多く転がっているはずだ。
動きの制限が徐々になくなり、表情にも明るさが戻ってきた。「野球ができるからいいかなという感じです」。リハビリという地道な日々の中でも、絶対に手は抜かない。後輩が自分の背中を見ている。
(鷹フル編集部)