鷹への移籍で「1年で終わるかも」 明暗分かれる現役ドラフト…“成功例”25歳が語る価値

契約更改交渉後の会見に臨んだソフトバンク・長谷川威展【写真:竹村岳】
契約更改交渉後の会見に臨んだソフトバンク・長谷川威展【写真:竹村岳】

鷹・長谷川威展が契約更改…1730万アップの2500万円でサインした

 常勝軍団への移籍には不安もつきまとった。ソフトバンクの長谷川威展投手が6日、みずほPayPayドームで契約更改交渉に臨み、1730万アップの2500万円(金額は推定)でサインした。昨オフの現役ドラフトで加入。「(球団からは)『1年間、ほぼ1軍にいてリーグ優勝に貢献してくれたと思います』と言われました。まだまだだとは思いますけど、ちょっとだけ貢献できたのかなとは思いますね」と笑顔で振り返る。

 金沢学院大からドラフト6位で日本ハムに指名された。2年間で通算11試合にとどまり、昨オフにソフトバンクに移籍した。3年目となった今季は32試合に登板して6ホールド、防御率2.49を記録するなどブルペンの一角としてリーグ優勝に貢献。チャンスを得た選手の中でも“成功例”といえる選手の1人だろう。キャリアハイの成績を残した一方で、福岡にやってくる前の心境は「不安」だったと明かす。

「ソフトバンクホークスに入団するので、試合に出られるのかという気持ちがありました。2軍で野球ができるのかすら不安っていうくらいの気持ちで、(去年の)この時期は過ごしていました」

現役ドラフトで移籍しても「1年で終わってしまうかもしれない」

 結果的に、リーグ優勝を果たした2024年。厚い選手層に対して「同じサウスポーの田浦(文丸投手)が怪我をして、左投手が出てこなかっただけ。他にもう1人いたら、どうなっていたかわからない。運が良かっただけです」と少し後ろ向きな思いを抱いていた。仮に3年目を日本ハムで迎えていたとしても「ファイターズは左投手が多いですから。ホークスに来られて投げられるようになったのも、たまたまです」。まさに現役ドラフトが自分のキャリアを左右する分岐点となった。

 自分と入れ替わるようにして日本ハムに移籍した水谷瞬外野手は、球宴に選出されるほどの活躍を見せた。「僕とか水谷くんとか、そういう選手が活躍することで今年、来年とより良い制度になってほしい。マイナスなところが考えられがちですけど、いい方向に向かってほしい。価値を上げていけたら」。現役ドラフトにおける“マイナス”――。真意を問われると、答えはやはり「不安」だった。

「自分のチームを離れるのは寂しいですし、1年で終わってしまうかもしれない。そういう不安はあるので、(活躍することで)払拭できるようにしていきたいですね」

 2022年オフに行われた1回目の現役ドラフト。ソフトバンクに加入したのは、古川侑利投手だった。2年間の在籍で9試合登板に終わり、今年10月に戦力外通告を受け、現役引退を決意した。弱肉強食の世界。一流も若手も、誰しもが不安を胸に戦っている。

(竹村岳 / Gaku Takemura)