「何回も失敗してきた」周東佑京が明かす“本音” 短期決戦で緊張する決定的瞬間

前日会見に出席したソフトバンク・周東佑京【写真:冨田成美】
前日会見に出席したソフトバンク・周東佑京【写真:冨田成美】

9月30日に登録抹消…左膝のコンディションは「バッチリです」

 どんな時も飾らない、選手会長らしい本音だった。明かしたのは、思わず「緊張」してしまう瞬間。「それで何回も失敗してきていますから」――。

「2024 パーソル クライマックスシリーズ パ」ファイナルステージが、16日から開幕する。リーグ2位の日本ハムはファーストステージでロッテを2勝1敗で退け、福岡に乗り込んだ。リーグ覇者として待ち受けるのは、ホークス。前日会見がみずほPayPayドームで行われ、小久保裕紀監督と周東佑京内野手が出席した。

 周東は今季123試合に出場して、初の規定打席に到達。打率.269、2本塁打、26打点をマークし、41盗塁で2年連続3度目のタイトルを獲得した。9月28日の日本ハム戦(エスコンフィールド)で左膝の違和感を訴え、30日に登録抹消。会見の壇上では不安視されていたコンディションについて、「バッチリです」と力強く答えた。一戦必勝の短期決戦。選手会長としてチームの先頭に立ち、勢いに乗る日本ハムと対峙する。

 今季がプロ7年目。育成入団から這い上がり、日本代表も経験するなど、ホークスを代表する選手の1人となった。数々の舞台を味わってきたが、緊張するかどうかは「(その時に)ならないとわからないです」という。その上で、緊張感の高まりを一気に感じる瞬間を明かした。

「試合前です。セレモニーとかの時。あれで緊張が増します。なしでやってくれても助かりますけど(笑)」

 開幕戦を除けば、シーズン中にはないような盛大なセレモニーが行われることで、CSが特別な一戦であることをより実感するようだ。「緊張する年もあるし、しない年もあります。去年(2023年)とかは全然でした。去年は(リーグ)3位でしたから。優勝して迎えるCSが久しぶりだから、それがどうなるか。明日にならないとわからないです」。昨年のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)と比較しても「WBCはスタメンで出ていなかったじゃないですか。だから何も考えていなかったですけど」。キッパリと言い切ってしまうところも、周東らしかった。

 会見を終え、周東は自身の左膝については改めて「バッチリです、と書いておいてください」と強調した。登録抹消されて2週間以上が経過した。「回復することに集中していました。練習しすぎない。かといって、やらなすぎないようにしていました」と、適切な運動量を常に見定めてきた。「大丈夫じゃないですか。普通に動けましたし、あとはアドレナリンが出れば余裕かなと思います。100%に近い(状態)です。シーズン中も、そんなに100%で動いていることはなかったので」。当然、CSに出場するつもりで調整してきた。

 リーグ王者として待ち受けるCSファイナルステージ。2020年には当時の工藤公康監督からキーマンに指名された周東だったが、同年の日本シリーズでは16打数1安打に終わるなど、短期決戦の難しさを痛感した。昨年、ZOZOマリンで行われたCSファーストステージでも8打数1安打と、シーズンと全く違った緊張感であることは誰よりも理解している。心がけるのは、自分自身をコントロールすることだ。

「“打ちたい”(気持ち)が強くなりすぎないことです。それで何回も失敗してきているので。CSも日本シリーズも。周りが打っていても、あまり気にすることなく、その場その場でやれることをやること。頭をクリアにすることが大事になるかなと思います」

 過去の経験について続けて質問をされると「打ちたいんですよ。打ちたい」と、食い気味に返答した。後悔している間に終わってしまう短期決戦。選手としての本音ものぞかせた。「めちゃくちゃCSのMVPとか取りに行きたいんですけど、空回りしてしまうので。それがないように、頭を冷静にしていけたら」。味わった悔しさを思う存分に生かして、日本シリーズへの挑戦権を掴みにいくつもりだ。

「いかにゼロで抑えるか。ゼロとは言わないですけど、最少失点で戻ることが大事になると思います。ビッグイニングを作らせないようにいけたら」

 短期決戦を何度も経験してきた選手会長は、チームとして戦い方の“鉄則”を強調した。昨シーズンが終わった時から「僕たちはもう常勝軍団ではない」と言葉にしてきた。リーグ優勝を掴んだ王者として、日本ハムに立ち向かう。

(竹村岳 / Gaku Takemura)